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第9回 運動習慣をつくる

2017.6.21 12:50 為末 大
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為末大氏
為末大氏

 スポーツ庁が「スポーツが嫌いな中学生を半分に減らす」という目標を立てた。これについて「スポーツが嫌いなことは悪いのか」という反発の声も上がっているが、冷静に考えてみるとメリットは大きい。


 幼少期の運動体験自体はそれほど生涯の運動習慣づくりに貢献していないが、運動を好ましいと思う傾向は運動習慣づくりにある程度貢献するといったデータがある。


 少子高齢化を既に迎えている日本では、病気になった後の医療だけでは医療費がかさみすぎて支えることができず、自ら運動を行い、食生活をコントロールすることで、医療費を抑制する方向に向かわなければならない。だが、運動を好ましいと思っていない人にとっては、知識も体験もなく、いきなり運動を継続することは難しい。人生の早いタイミングで運動習慣をつくり、また栄養の知識を持つことが望まれる。


 ハーバード大学のレイティ医師によれば、米イリノイ州の子どもたちは、授業が始まる前の運動を続けた結果、テストの成績が上がった。詳細は分からないことも多いが、運動をしたことで、脳内に何らかのよい影響を与えているのではないかという仮説を唱えている。


 運動習慣を持つことは個人の観点からみても、また日本の国全体からみても望ましいが、実際にスポーツを好きになるような「スポーツ文化」になっているのかといえば、疑問を持たざるを得ない。


 スポーツは本来自発的な行為であり、自由を感じるものだと私は考えている。今のスポーツ文化では命令に従うことが強調されすぎている。私の友人が「スポーツは嫌いだけれども、ランニングは好きです」と言ったのは現状を表しているなと思った。


 スポーツが好きな中学生を増やすだけではなく、スポーツまたは運動が生涯にわたって好きになる取り組みを中学生時代に行うとすれば効果は大きい。ただ、それを実現するにはスポーツ界が変わっていかなければならない。命令から自立へ、規律から自由へ。鍵はスポーツそのものではなく、スポーツ界の奥底に潜む文化にある。

為末 大

名前 :為末 大

プロフィール:ためすえ・だい 1978年、広島市生まれ。法政大卒。陸上男子400メートル障害で2001年と05年の世界選手権で銅メダルを獲得。五輪は00年シドニー、04年アテネ、08年北京と3大会連続出場。著書に「諦める力」「逃げる自由」など。

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