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【為末大の視点】「非スタジアム型」のスポーツ

2019.2.25 13:32 為末 大
ブレークダンスの世界ユース選手権女子で優勝した河合来夢選手の踊り=2018年5月、川崎市(日本ダンススポーツ連盟提供)
ブレークダンスの世界ユース選手権女子で優勝した河合来夢選手の踊り=2018年5月、川崎市(日本ダンススポーツ連盟提供)

 

 2024年のパリ五輪では野球・ソフトボール、空手が追加種目の候補から外れた。五輪はこれまでに大きくなれないほど大きくなり、今後は新しいスポーツを入れるなら何かを外すしかない状況になっている。追加されるのは東京五輪から引き続いてスポーツクライミング、サーフィン、スケートボード、そして新しくブレークダンスが候補に挙がっている。

 私は現在の五輪の視聴者・ファンはヨーロッパ、米国、日本など先進国に偏っていて、しかも一定の年齢以上が多いのではないかと考えている。国際オリンピック委員会(IOC)メンバーの出身国は、昔より比率は下がったとはいえ、ヨーロッパと米国が最大だ。一方で、現在の地球を眺めると人口はアジアに集中していて、平均年齢も若く平均所得も上がってきている。将来の顧客を想定すると、五輪に限らずアジア諸国の若者層をどう取り込めるかが重要になる。

 今回、候補に挙がっている四つの競技はいずれも見る人よりもする人が多く、勝負よりも遊びが主眼に置かれているスポーツだ。さらにもう一つの特徴は「非スタジアム型」だということだ、サーフィンは海、クライミングは山、スケートボード、ブレークダンスは都市から生まれた。つまり「非スタジアム型」「遊びのスポーツ」が今回の特徴になる。この競技が候補入りしているのは、若者を引きつけるためなのではないかと考えている。

 スポーツを楽しむのであれば観戦が主だった時代と違い、今の世代は自ら表現することが娯楽だと感じている。映画は座って見るものだが、インスタグラムで自分たちを撮ることを楽しむ。小説は読むものだったが、ツイッターや会員制交流サイト(SNS)で書くことを楽しむ。今の世代は、受け身でいることよりも、自ら表現することを娯楽と捉える傾向にあり、さらに国が違っても文化の違いがあまり感じられない。それはインターネットを通じ、世界中が同じコンテンツを消費しながら育った初めての世代だからではないだろうか。

 私は「スポーツは将来、二極化する」と読んでいる。巨大なスタジアムで行われるメジャースポーツと自らが体を動かす、遊ぶスポーツ。今回の発表を見て、その確信を強めた。「sports」の語源はラテン語の「deportare」と言われ、「憂さを晴らす」「日常から離れて遊ぶ」という意味があったそうだ。そういう意味でsportsは長い時を経て原点に返りつつあるのかもしれない。=24回=

為末 大

名前 :為末 大

プロフィール:ためすえ・だい 1978年、広島市生まれ。法政大卒。陸上男子400メートル障害で2001年と05年の世界選手権で銅メダルを獲得。五輪は00年シドニー、04年アテネ、08年北京と3大会連続出場。著書に「諦める力」「逃げる自由」など。