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【為末大の視点】大坂選手の成功を再現できるか

2019.1.28 14:20 為末 大
テニスの全豪オープン女子シングルスでペトラ・クビトバを破って優勝し、トロフィーを手に笑顔の大坂なおみ=26日、メルボルン(共同)
テニスの全豪オープン女子シングルスでペトラ・クビトバを破って優勝し、トロフィーを手に笑顔の大坂なおみ=26日、メルボルン(共同)

 

 大坂なおみ選手が全米オープンに続き、全豪オープンの女子シングルスで優勝した。日本のテニス界にとってもスポーツ界にとってもうれしいニュースだ。

 このような素晴らしい選手をどうすれば輩出できるのだろうか。まず才能を持って生まれ、そして基本的な価値観を家庭で身に付け、自分に合った種目に出合い、教育により才能を開花させる必要がある。世界の頂点に到達するには、これらの絶妙なバランスが必要だ。才能を持って生まれるだけでも駄目だし、合わない競技で努力しても難しいだろう。私もハードル種目以外では世界と戦えなかったと思う。

 スポーツ界にシステムを作るという目線で語れば、生まれはコントロールできず、家庭教育もコントロールは難しい。運任せと言っていい。意識的にコントロールできるのは、才能を生かせる種目とのマッチング、さらには才能を開花させる教育だ。こちらはコントロールでき、かつ他の選手でも再現することが可能だ。つまり再現性を持って大坂選手のようなアスリートを輩出していくには、マッチングと教育のレベルを上げる必要がある。

 大坂選手とテニスとの出合い、教育は米国で行われている。これは何を意味するのか。才能を開花させる教育の経験は米国にたまっていくことになる。特に今の時代のスポーツは競技ごとのホットスポットに才能が集まるようになっている。「テニスはフロリダ」「陸上長距離はオレゴン」というように。国籍は関係なく、才能が集まる場所に選手は引き寄せられていくので、余計に教育ノウハウは一極集中する。

 日本はこれから少子化かつ、人口減少時代を迎える。自分の才能を生かせる分野とのマッチングとその才能を生かす教育の精度を上げなければ、これから徐々に日本選手が活躍していくことは難しくなる。とはいえ、アマチュア競技も含め、これだけ世界で活躍する選手が出ているということは日本のシステムに何らかの有用性があるのだと思う。これを徹底的に分析し、強化することが重要だろう。これから先は、大坂選手の活躍を喜ぶのと同じように、日本の教育システムで開花した外国選手の活躍も誇っていいと思う。国籍を問わず才能を開花させる国になれば、才能が集まるようになり、経験が蓄積されていく。

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、「Educated by Japan」を一つの目標にしてはどうだろうか。結局のところ、生まれには再現性はないが、育成には再現性があるのだ。=23回=

為末 大

名前 :為末 大

プロフィール:ためすえ・だい 1978年、広島市生まれ。法政大卒。陸上男子400メートル障害で2001年と05年の世界選手権で銅メダルを獲得。五輪は00年シドニー、04年アテネ、08年北京と3大会連続出場。著書に「諦める力」「逃げる自由」など。