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【為末大の視点】 スポーツ界は変われるか

2018.5.31 13:52 為末 大
日本大アメリカンフットボールの反則問題を巡り、記者会見する井上奨前コーチ(左)と内田正人前監督=東京都千代田区
日本大アメリカンフットボールの反則問題を巡り、記者会見する井上奨前コーチ(左)と内田正人前監督=東京都千代田区

 

 日本大学アメリカンフットボール部の悪質な反則だけでなく、昨今、スポーツ界が起こす問題が多く、なぜこんなにも相次ぐのかと指摘されることがある。私はその理由は、スポーツ界の一部組織は、本当は自分たちの何が問題とされているのかを理解していないのではないかと考えている。だから反省ではなく、事態を収めるために謝罪をしてしまい、余計に世の中が反応する。

 昔はスポーツだけではなく、企業などほかの組織にも問題があった。パワハラもよく見かけたし、ガバナンスに関する問題は企業にもあった。ところが時代とともに社会は問題に対応し、改善していった。「上が言うことは絶対だ」という文化は企業にもあったが、今はパワハラとして認識されている。

 ところが企業であれば、ひやっとするような場面がスポーツの現場にはまだある。あからさまに恣意的な選手選考や、パワハラ的行為が存在する。それはスポーツ界の人間がとても悪人だからではなく、ただ現代の基準がどんなものか分からず、昔の基準で生きているからではないか。だから社会で問題になった時に、面食らったような様子でどう対応していいのか分からない。

 では、なぜスポーツだけがずれてしまったのか。スポーツの世界は、生え抜きの人間が多く、そのスポーツ出身の人間だけで全体が構成されている組織もある。選手が生涯、競技に携わりたい場合は、引退した後も自分がいる世界は同じ場所なので、上に異論を唱えることがはばかられる。外部の人間と関わる機会も少ないので、外の常識が入り込みにくい。そして、気が付いた時には内側の人間は何も言えない異質の組織になっている。

 そのようなスポーツ組織はどうすれば変われるのか。一つは外部役員の設置だ。外部の人間を入れて、何が普通ではないかを指摘してもらい改善する。確かに痛みも伴うが、長い目で見ればその方がスポーツは発展するし、世間から身を守ることもできる。第二に「アスリートファースト」の徹底だ。現状は選手よりも勝利に目的が絞られている。アスリートファーストの本当の意味は選手の人生を第一に考えることだ。勝利にとってはプラスでも、人生にとってプラスとは言えない指導を社会は望んでいないと思う。

 スポーツは変わらなければならない。元アスリートとしては外圧ではなく、自浄能力によって変わってほしいと願う。=17回=

為末 大

名前 :為末 大

プロフィール:ためすえ・だい 1978年、広島市生まれ。法政大卒。陸上男子400メートル障害で2001年と05年の世界選手権で銅メダルを獲得。五輪は00年シドニー、04年アテネ、08年北京と3大会連続出場。著書に「諦める力」「逃げる自由」など。