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同じ星空を見た夜

2012.10.5 18:11 共同通信

▽同じ星空を見た夜

同じ星空を見た夜  どうしてあの星空を忘れられようか。2011年3月11日。電話も通じない停電の町。一体、東北の沿岸部はどうなってしまったのかと今にも泣きだしたい気持ちで、私は岩手県警が発表した資料を持って県庁の記者クラブへ急いでいた。何度往復しただろう。見上げれば満天の星、いつもより大きく見える月の輝きの明るさ。つい数時間前の大地震がうそのようだ。なぜこんな時に、こんなにも美しいのかと、自然の理不尽さに憤りすら覚えたあの星空を。

 千葉県在住の絵本作家、うささんが企画したチャリティー展「震災で消えた小さな命展」のポスターがその夜空を再現している。タイトルは「同じ星空を見た夜」。昨年10月、宮城県で震災ボランティアをしたうささんは、震災で肉親を亡くした人の前で、ペットを失った悲しみを表に出してはいけないと我慢し続ける人がたくさんいることを知った。絵本作家の自分がペットをなくした飼い主と犠牲になった動物をつないであげることはできないか。それが動物の絵を描き、飼い主に贈るこの企画の始まりだった。もし飼い主が写真を持っていればそれを元に、津波でなくした場合は特徴などを聞きながら、絵の中にもう一度命を吹き込んでいった。

 うささんは、作業を続ける中で何人もの被災者から「震災当日の夜は星がきれいだった」という話を聞いた。首都圏や西日本で気付いた人はどれくらいいただろうか。ポスターに仲良く並んだ犬やネコ、ウサギの姿が愛らしい。そこには牛や豚もいる。うささんは津波被害だけでなく、東京電力福島第1原発の事故のため、大切な家畜を置き去りにしなければならなかった人たちの心の痛みも表現したいと考えたのだ。ポスターで瞬いている無数の星々が切ない。あの日津波で多くの命が星になったことを暗示しつつ、後に立ち入りを禁じられ帰宅できなくなった主人を待つ家畜やペットたちが見上げた同じ星空でもある。

 チャリティーには国内外の絵本作家や画家らが協力して絵を仕上げた。ことし3月から6月にかけ、国内5カ所と台湾で展示会が行われ、多くの人に「看取られた」49枚の絵が飼い主の元へ帰った。入場料は無料だが、会場で販売する絵はがきや絵本の売り上げを開催資金に回した。現在は千葉県を皮切りにパート2の企画が開かれており、来年9月まで各地で絵が展示される予定だ。

 震災後、各地で緊急時にペットと一緒に避難する方法を模索する動きが出ている。うささんは5月の東京展で、「今は飼い主さんや一般の人が見にくるケースが多いが次回は避難所の運営に携わる行政の人にぜひ見てもらいたい」と話していた。災害時にどのような避難誘導や避難所運営が必要か。せっかく助かっても避難所で命を落とした動物も少なくないことをうささんは静かに訴えている。同じ星空の下、千年に一度の災害をともに生き延びた大切な命。それを目の前で失う悲劇はもう二度とあってほしくないという願いが痛いほど伝わってくる。(2012年10月5日、47NEWS 黒川美加)

 【写真】ポスター「同じ星空を見た夜」=うささん作

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