大人の散歩

2014年11月18日
共同通信共同通信

▽大人の散歩

 11月、千葉県にある天台宗の古刹、大悲山「笠森寺」にお参りに行った。県のほぼ中央、JR茂原駅から路線バスにゆられて半時間。国内唯一の「四方懸造り」の観音堂がある。切り立った岩盤の上にそびえるお堂は、幾本もの長い柱で支えられていて、なかなかの奇勝だ。

 回廊から眺めると、温暖な房総らしく、山並みには赤や黄色が混じり始めたばかり。うま年で開帳された本尊の十一面観音は、最澄が刻んだと伝わる。ありがたく、柔和なお顔を拝ませてもらった。

 笠森寺は「坂東三十三観音」31番目の札所で、鎌倉時代から続く巡礼地。中高年を連想させる巡礼も昨今では、仏教ブームに加え、名物や温泉といった周辺観光が味わえるとあって、若い女性らが人気を後押ししている。

 四国遍路、西国三十三観音、それに熊野詣でが有名だが、全国には神様や仏様を巡る道はいくつもある。記者が数年前に出合った「江戸三十三観音」は、東京23区内の観音様を巡拝する。

 番外を含め34カ寺。1日に何キロも歩き続けるような苦行とは違い、地下鉄やバスなど公共交通機関が使える。仕事ついでに立ち寄ったり、休みの日に自転車を活用したりもした。

 巡礼には欠かせない「御朱印帳」。一つまた一つと、お参りした〝証し〟が帳面を埋めていくと、いやが上にもやる気が出てくる。個性豊かな印や墨書きされた梵字。スタンプラリー的な楽しみ方をする人も多い。

 回る順番は自由。全てを参拝し終えれば、祈った願いがかなう「結願」となる。江戸三十三観音では33番札所の目黒不動尊(目黒区)で終了すると、結願の印がもらえて、達成感もひとしおだ。

 現在は、坂東三十三観音を巡っている。こちらは関東の1都6県に散らばる上、不便な山あいにもあり、少し手ごわい。もうすぐ2年。バスツアーや車を使わずに回っていることもあり、まだ道半ば。今年は「午歳結縁」と、観音巡礼にとって特別な年だったのだが…。来年に持ち越しは言うまでもない。

 街歩きの延長という軽い気分で始めた巡礼は、「般若心経」「写経」「座禅」と、興味の方向が次第に抹香臭くなってきている。知り合った人形町の住職に言わせるとこうだ。「若い子ならちょっと心配だけど、あなたはもう、そういう年齢なんですよ」

 山門をくぐり、境内へ。水屋で手と口を清め、本尊に手を合わせる。ただこれだけで、しばしの間、心が軽くなり、穏やかな気持ちになれる。出合いや発見も新鮮な〝大人の散歩〟。かなりお薦めだ。

 合掌。

(2014年11月18日 47NEWS 三枝正道)

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