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人魚の涙

2014.11.29 12:18 共同通信

▽人魚の涙

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設のため名護市辺野古の海を埋め立てる基地建設事業をめぐり、国内の環境、平和などの17団体が連名で11月25日、共同声明を発表した。声明に加わったラムサール・ネットワーク日本(東京)によると、10月にラムサール条約事務局が環境省に宛てた文書が、建設予定地に絶滅危惧種のジュゴンが食べる海草の藻場があることなどを指摘した上で、埋め立てによる環境への影響や対策などを事務局に知らせるよう求めたことを受けたものだ。17団体は声明で、環境省が誠意をもって回答するよう訴えている。

 人魚のモデルとされるジュゴン。日本では沖縄島周辺に数頭のみが生息するとされる。辺野古ではジュゴンが海草を食べた跡が確認されており、特に防衛省沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)終了後、埋め立て予定区域から多く見つかった。ジュゴン保護はどのようにするのか。アセス書は防衛局のホームページで閲覧でき、その中にはジュゴンを「監視」するシステムがイラスト付きで紹介されている。埋め立て工事で、作業船がジュゴンに衝突しないよう、ヘリコプターなどで定期的に安否確認するシステムだという。一見、ジュゴンに配慮したかのような大掛かりなものだ。

 しかし、基地建設に向け海上調査が行われたこの夏、辺野古の海はジュゴンにとって危険だらけだった。沖に停泊する海上保安庁の巡視船や巡視艇、ゴムボート。さらに防衛局がチャーターした漁船で海はいっぱいだった。それにも関わらず先に紹介したシステムは、埋め立てが本格化してから稼働するもので、調査という準備段階は対象ではないらしい。もっとも、船のエンジン音に怯えるジュゴンは、衝突以前に餌場から逃げるしかなかったと考えられる。表面上、手厚く保護する方策を並べながら、ものが言えない野生動物を人為的な危険と飢えにさらし続けるのは、なんとむごいことだろう。

 アンデルセンの「人魚姫」は人間の王子に恋をした人魚が声を失う物語だ。人魚が声と引き換えにしてまで届けたかった思いは王子に伝わらなかった。ジュゴンがすむ海は豊かな生態系を持ち、人間をも養ってくれる海ということ。私たちは話すすべのない生き物の声に耳を傾け、自然に生かされている存在だということをあらためて考えるべきだ。人魚の涙は物語だけでいい。(2014年11月29日 47NEWS 黒川)

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