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47リポーターズ

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W杯準備の陰で北朝鮮労働者の悲惨

2017.4.3 16:52 共同通信
クレストフスキー・スタジアム(ウィキメディア・コモンズから)
クレストフスキー・スタジアム(ウィキメディア・コモンズから)

 2018年のサッカー・ワールドカップ(W杯)開催に向け、スタジアムや道路などのインフラ整備が進むロシア。しかし、華やかなスポーツの祭典を前に北朝鮮の出稼ぎ労働者の悲惨な「奴隷労働」の実態が明らかになりつつある。しかも、「ピンはね」された給与の一部は本国に送られ核開発など軍事目的に転用されている疑いも。詳細を伝えたノルウェーのサッカー専門誌「ヨシマル」(英語版)の報道を見てみると・・・

 ロシア第2の都市サンクトペテルブルク郊外で建設が進むクレストフスキー・スタジアム。当初は同市のクラブチーム、FCゼニト・サンクトペテルブルクの本拠地として建設が始まったが、W杯ロシア開催が決まった後は、W杯や20年の欧州選手権の試合会場としても使用されることが決定。当初は08年末に完成予定だったがずれ込み、公式には今年2月にオープンしたもののさらに仕上げの作業が続いている。

 ヨシマルは建設会社の現場監督や、建設作業員になりすまして現場に入った現地の記者らを取材。それによると、建設作業には中央アジアのタジキスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、ロシアの隣国ベラルーシ、ウクライナのほか多くの北朝鮮労働者も従事。同誌が確認しただけでも少なくとも110人の北朝鮮人が働き、うち1人は出稼ぎ中に死亡した。病死とみられる。

 取材に応じたロシア人現場監督にも北朝鮮労働者雇用の打診があった。昨年夏ごろから年末まで100人の北朝鮮労働者を終日働かせる見返りとして600万ルーブル(約1200万円)を要求された。うち400万ルーブル(約800万円)は北朝鮮政府が「ピンはね」し、残りを派遣会社と労働者が折半する仕組みとなっている。労働者は貨物コンテナを改造した宿舎に住み、1日の休みもなく午前7時から深夜まで働かされる。

 ロシアの人権団体や弁護士によると、労働者は旅券を取り上げられ、監視され、逃走した場合は母国に残る家族を弾圧すると脅されている。給与のピンはねの割合は時に90%に上ることもあるという。一部人権団体は北朝鮮労働者に対する人権侵害の実態を究明するよう国際サッカー連盟(FIFA)に要求した。

 北朝鮮労働者の派遣は全世界規模で行われており、たとえば金正男氏殺害事件を契機に北朝鮮との外交関係を見直しているマレーシアは北朝鮮にとってビザなしで渡航できる数少ない国で、13年時点で約300人が鉱山などで働いていたとされる。16年の米国務省の報告によると、労働者の主な派遣先はロシアと中国で、労働環境は劣悪で労働時間は12~16時間、時には20時間に上ることもあるとしている。国連の調査によると、こうした労働者派遣による所得は年額20億ドル(約2200億円)にも上るなど北朝鮮の主要な外貨獲得源となっており、一部は核開発など軍事開発にも充てられているとの疑惑も出ている。 (47NEWS編集部 太田清)

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