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ロシア首相解任は不可避か

2017.5.1 15:05 共同通信
北方領土・択捉島の水産加工場で、説明を受けるロシアのメドベージェフ首相(右)=2015年8月22日
北方領土・択捉島の水産加工場で、説明を受けるロシアのメドベージェフ首相(右)=2015年8月22日

 4月末に発表されたロシアの世論調査結果と、調査に対するクレムリンの反応が驚きをもって受け止められている。

 ロシアの独立系世論調査機関レバダ・センターは26日、毎月定例の大統領と首相に対する支持率を発表。メドベージェフ首相(前大統領)の不支持率が54%と支持の44%を大きく上回ったのに加え、回答者の45%が内閣交代を支持しているとの結果(明確な支持18%、どちらかといえば支持27%)が出たのだ。インタファクス通信によると、ペスコフ大統領報道官は「半数近くが首相退任を支持しているとの結果に対し、クレムリンは注意深く接しているが、大統領府が結果を分析するのには時間が必要だ」と意味深なコメントを行った。

 メドベージェフ氏を「完全に支持する」とした回答者は昨年5月の14%から3%に激減。逆に「全く支持しない」とする人は14%から19%に増えた。メドベージェフ氏のチマコワ報道官は世論調査について「特定の政治的要請」を受けて行われたと述べ、客観性はないと主張したが、プーチン大統領が支持率にかかわらず首相を支えるつもりなら、ペスコフ氏がこうしたコメントをすることはあり得ないだろう。

 ロシアは2014年のウクライナ領クリミア併合やウクライナ東部紛争を受けた欧米の経済制裁と、原油価格下落の影響で15年からリセッション(景気後退)に入り、ルーブル安でインフレも亢進。緊縮財政により年金や公務員給与は実質減となり、経済政策を担当するメドベージェフ氏への風あたりが強くなっているが、支持率減少の要因はそれだけではない。野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が自身のサイトでメドベージェフ氏の巨額収賄を告発。モスクワなどロシアの主要都市では3月、汚職抗議デモが行われ数万人が参加、下院選挙不正疑惑への抗議から始まった11~12年の大規模デモ以来最大の反政府行動となった。

 ナワリヌイ氏によると、メドベージェフ氏はモスクワのほか、サンクトペテルブルクの豪邸や高級ヨット、イタリアのワイン用の広大なブドウ畑といった計700億ルーブル(約1370億円)に上る莫大な財産を、事実上自分のために利用している。こうした財産は、関係の深い財閥オーナーが慈善団体への寄付名目で支払った資金などにより購入されたと主張。汚職の明確な証拠こそ示せなかったものの、ナワリヌイ氏のサイトは大きな反響を呼び、アクセスは2000万に達したという。こうした告発が首相の人気低迷に拍車を掛けたことは想像に難くない。

 メドベージェフ氏は07年に当時のプーチン大統領から後継指名を受け08年、大統領選に当選。12年には逆に大統領選で勝利したプーチン氏と入れ替わる形で首相に就任した。両氏の間での職務の入れ替えは、チェスでキングとルークの場所を入れ替える手法になぞらえ「キャスリング」(ロシア語で「ロキロフカ」)と呼ばれた。

 プーチン氏がメドベージェフ氏に大統領職を譲ったのは、サンクトペテルブルク市幹部時代から続く長い個人的関係以外に、同氏が側近の中で政治的野心に乏しく、法律家出身で、軍や連邦保安局(FSB)、石油・ガス、軍需産業などに政治的基盤を持たないことから、最も御しやすいと判断したためと言われる。しかし、メドベージェフ氏は4年間の大統領在任中、リベラル色を強く打ち出し、対米関係の「リセット」やリビア内戦への不介入、プーチン氏が国営化を進めた主要産業の民営化計画などを推し進め、シロビキ(治安機関出身の強硬派)からの反発を呼んだ上、一時、大統領再選を目指したことからプーチン氏自身からも不信の目で見られるようになったとされる。

 「ロキロフカ」により、首相になったものの、ロスネフチ社長のイーゴリ・セチン氏らを代表とするシロビキとの反目は続き、特にクリミア併合以降、保守・強権色を強めるプーチン政権の中では数少ないリベラル派と目されるようになっている。

 ロシアでは4月29日にも、プーチン政権打倒を訴えるデモが各地で行われ、参加者160人以上が拘束されるなど小規模とはいえ反政府の動きは収まっていない。 政治学者のガリャモフ氏はニュースサイト「ガゼータ・ルー」に対し、首相退陣は不可避とした上で、解任は「プーチン氏が最大の政治的効果を得る」と判断した時期で、最も可能性の高いのは「(来年の)大統領選の選挙運動が終わった時期だろう」との見通しを示した。 (47NEWS編集部 太田清)

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