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小国の首相を押しのけたトランプ氏の傲慢さ

2017.5.26 11:40 共同通信
NATO首脳会議で写真撮影に臨む各国首脳ら=25日、ブリュッセル(ロイター=共同)
NATO首脳会議で写真撮影に臨む各国首脳ら=25日、ブリュッセル(ロイター=共同)

 25日にブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、トランプ米大統領がまた物議を醸した。首脳らの記念撮影に向かう際に、前に出るため横にいたモンテネグロのマルコビッチ首相を手で押しのけたのだ。トランプ氏は押しのけられたマルコビッチ氏に一瞥をくれることもなく、あごを軽く上げたいつものスタイルで周りを見渡し、背広を両手で整えた。その一部始終がカメラにとらえられ、米ABCテレビなどはトップニュースで報じた。

 モンテネグロは欧州のバルカン半島にある人口約60万人の小国。「黒い山」との国名が示すとおり内陸部を山岳部が占める一方で、南部はアドリア海に接する。筆者も取材のほか休暇でも何回か訪れたが、美しい山と海を持つ風光明媚な国だ。主要産業は観光と農業。ユーゴスラビア崩壊に伴う長い動乱の時代を経て、2006年にセルビアから分離独立したばかり。既に29カ国目のNATO加盟国となることが決まっており、今回の首脳会議には加盟決定国として参加した。

 超大国米国にとっては取るに足らない国なのだろう。トランプ氏の振る舞いは米国の傲慢さを象徴するエピソードとして受け止められたが、方やマルコビッチ首相は最初は驚いた様子ながら、嫌な顔をすることもなく逆にトランプ氏に笑顔を浮かべた。何か卑屈とも取られかねない様子だったが、それもやむを得ないのかもしれない。欧州連合(EU)、NATO加盟を通じた欧州への統合を悲願とするモンテネグロにとり、米国はかけがえのない〝恩人(国)〟だからだ。

 モンテネグロ加盟については、NATOへの対抗姿勢を強めるロシアが強く反発。特に同じスラブ系住民が多数を占め、宗教も東方正教と歴史的に深いつながりを持つモンテネグロが米国、西欧諸国を中心とするNATOに参加するということは、ロシアにとり「裏切り」とも映っただろう。昨年10月のモンテネグロ議会選の際には、暴徒が国会に乱入し約20人が逮捕される事件があり、同国検察は「ロシアの民族主義者が黒幕との証拠を得た」と主張。NATO加盟を妨害することが目的だったとされている。

 こうした中、モンテネグロのNATO加盟を中心となって推し進めたのが米国だった。既に上院が加盟議定書を批准するなどモンテネグロ支持の姿勢を明確にしている。マルコビッチ首相はAP通信に対し「米大統領が(記念撮影の)前列に並ぶことは自然なこと」とした上で「NATO加盟への米国の全面的な支持」に感謝の気持ちを述べた。峻厳な国際政治の世界では、トランプ氏にとっては小国モンテネグロの首相が、マルコビッチ氏にとっては強引に押しのけられたことが、それぞれ取るに足らないことだったのかもしれない。  (47NEWS編集部 太田清)

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