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拉致とバイオリニスト

2017.6.5 11:03 共同通信
         五嶋龍さん
         五嶋龍さん

 ニューヨークにいる世界的なバイオリニストの五嶋龍さんからメールが届いた。

 私は音楽の専門記者ではないが、昔、たまたま同じ時期にニューヨークにいたという理由だけでお付き合いをしてもらっている。去年は、漫画好きの龍さんに、手塚治虫の魅力について書いてもらったこともあった。メールは、時々送ってもらう演奏会の予定かと思ったら意外なアピールだった。

 8月から10月にかけ、日本各地で「project R“拉致被害者を忘れない。”」という演奏ツアーを、大学生たちと一緒にやるのだという。北朝鮮による拉致被害者の家族らが高齢化する中で、解決の道筋の見えない現状に声を上げるためだ。

 アメリカで育った龍さんは、姉のみどりさんと同じように社会問題へのコミットに熱心で、開発途上国での教育や社会貢献にかかわっている。ただ、「拉致」は国と国との壁が立ちはだかる問題で、アーティストが取り組むには正直ハードルが高いと感じていた。龍さんの行動は、ひとことで言うと「意外」だった。

 龍さんは「知人友人たちの間でも、日本は行ってみたい国のベスト3。それはうれしいが、その日本が、拉致を忘れ、仮面のままで平和国家をうたえるのか」と、このテーマに突き動かされた動機を書いている。

 そして、龍さんを深いところで動かしたのは、自分を世界的な演奏家に育ててくれた、普段は涙を見せない母が、横田めぐみさんの家族の痛みを思って流す涙だったという。

 テレビの「題名のない音楽会」を見ていた方はご存じのように、龍さんの演奏は感情があふれ出すようで聴く人の気持ちを明るくさせる。彼のプラスのエネルギーで、拉致問題という重いカタマリが少しでも溶けるように願っている。

 ちなみに「project R」の「R」は、Remember、Rachi、Ryuの頭文字だそうだ。

 問い合わせ先はオフィスGOTO、電話090(2490)0650。

 (47NEWS編集部 宇野隆哉)

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