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47リポーターズ

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空とぶ新戦艦大和

2016.6.20 10:28

 梅雨の晴れ間をぬって、銀座7丁目にあるギャラリーへ出かけた。
 『新戦艦大和』小説+漫画600ページ試読会/復刻グラフィック展。
 小説/原作・梶原一騎氏、挿画・吉田郁也氏、漫画・団鉄也氏による幻の名作『新戦艦大和』の復刻プロジェクトだ。


 愉快な年上のトモダチからの一通の電子メールがきっかけだった。
 戦艦大和にも宇宙戦艦ヤマトにもさほど興味のない私は、「なぜこれ私と行くの?」と尋ねたが、「君なら興味があるかなと思った」というので、のらのらと出かけていったのだった。


 ギャラリーには私の知らない時代、1961年~63年にかけて連載されていた『新戦艦大和』の漫画や小説絵物語を拡大スキャンした印刷物展示になっていた。


 まったく知らない時代の作品。
 早口でやや独り言のようなトモダチの講釈に耳を傾けつつ、展示物などを見ているうちに、みるみるその物語や作画の力強さに圧倒されてゆく私。


 展示されていた作品は『日の丸』『少年画報』といった昔の漫画雑誌の連載作品だった。
 表紙モデルには、幼少時代のフォーリーブスの江木俊夫(マグマ大使の、と言った方がこの場合より正しいだろうか)。カウボーイハットに保安官バッジを胸につけた子どもの手には拳銃が握り締められていたりする。


 「母親がなかなか買ってくれなかった類の漫画だったんだ」とトモダチが言う。
 なぜだろう。
 『日の丸』に連載されていた小説版のその絵物語の内容をよくよく読んでいくと、海洋科学小説と題してある。しかしまた別の巻では「太平洋幽霊艦隊」とあったりする。


 「日本が誇る戦艦・大和は沖縄の海に沈んだはず! が、その大和が空をとぶのを東矢の乗組員たちは見た」(『新戦艦大和より引用』)
 さすが、梶原一騎氏だ。最初のつかみで、既にものすごい熱量を放っている。

 戦後10年ほどしか経っていない昭和36年。
 「空をとぶ戦艦大和」に当時の少年たちはどんなに興奮しただろう。
 三角翼を広げて飛んでいる大和の隣に、なぜかパンナムの旅客機が飛んでいるという奇妙な挿画にも驚かされる。


 しかも、吉田郁也氏による絵がものすごくうまい。
 当時の少年漫画にしては、ハイレベルなクオリティー。
 戦後10年ほどしか経っていない、画家が食えない時代だったからなのだろうか。それにしてもだ。


 私はそれを見て、タミヤ模型の箱や、今井科学のサンダーバード基地などのプラモデルの箱絵でおなじみの、小松崎茂氏のあの世界観をすぐに想起した。
 小松崎茂氏といえば、映画『マタンゴ』(1964年 本田猪士郎・円谷英二監督)のマタンゴのデザインもそうだ。
 この世界なら私の興味も俄然湧く。


 さらに驚かされたのは、不思議なロボット軍団の絵だった。
 それは、以前私が出演した映画『ミカドロイド』(1991年 原口智生監督)に登場するあの旧日本軍不死身兵士・ジンラ號をちょっと思わせ、私を狂喜させるではないか。


 団鉄也氏による漫画版もちょっとシュールなコマ割りが面白かった。
 絵のタッチは私の好きな『宇宙エース』(1965~66年タツノコプロTVアニメ)にちょっと似ている。
 私の初めての浮き輪が、なぜか『宇宙エース』だったからよく覚えている。


 「でもこれって誰か本当は違う人というか、ペンネームなんじゃないかという諸説もあるんだよね」
 トモダチが漫画を眺めながらふと独り言を口走る。
 実は現在、このプロジェクト展示では、作者の団鉄也氏の行方を捜しているとのことだった。
  

 「ほら、ちょっと似てないか? タツノコプロのさ、吉田竜夫の描く漫画に」
 「だれそれ?」
 「ガッチャマンだよ」


 ああああ!
 私はすぐにピンときた。


 ガッチャマンというよりも、これは『マッハGOGOGO』の三船剛のテイストにも似ているじゃないか。そして私の好きな『宇宙エース』も吉田竜夫だ。

 いったい、団鉄也とは何者?
 「Who is 団鉄也?」その真相は、ちょっと気になる。


 もっとも、今回の展示では、当時25歳の若き梶原一騎氏の奇想天外な驚異の才能とその炸裂したパワーに圧倒されっぱなしだ。


 原子炉を積み、空飛ぶ新戦艦大和。
 巨大空母に新零戦を満載。
 不思議な兵器ロボ軍団、などなど。
 当時の少年心を刺激するものばかり。


 この作品から影響を受けたであろう、漫画やアニメも多いはずだ。
 あの『宇宙戦艦ヤマト』もそうかもしれないし、『マイティジャック』などの三角翼がちょっと似ているではないかと思うほどだ。


 『巨人の星』『あしたのジョー』『愛と誠』『タイガーマスク』くらいしか作品群が出てこない私だが、それよりも以前の作品を知らない私にとって、今回の『新戦艦大和』との出会いはとても刺激的だった。


 当時の読んだこともない知らない絵物語と漫画に、果てしない妄想を抱く。


 一通り見終わって、本当にこの展示が無料なのかと顔を見合わせた。
 「なにか宣伝してあげようよ」
 「そうだな、そうしよう」
 

 というわけで、宣伝。
 6月26日(無休13時〜19時)まで、銀座チーパズギャラリーでやっているので、梶原一騎好き、SFアニメ、漫画ファンの方には是非オススメ。


 その後、銀座の老舗バー「サンボア」で、少年時代に戻ったようなトモダチと、漫画の吹き出しのようなおしゃべりをしながら、梶原一騎氏から杉浦茂氏まで、漫画談義で盛り上がった。


 昔の漫画には、想像力のリミッターを外してくれるような面白さがある。
 久々に未読の漫画、たとえば杉浦茂氏の『ドロンちび丸』や、白川まり奈さんの『侵略円盤キノコンガ』あたりを手にしてみようか。

展示会場では写真撮影、それをWEB公開もオーケー 図録やポストカードも販売していた
展示会場では写真撮影、それをWEB公開もオーケー 図録やポストカードも販売していた