【世界から】韓国が「永住権」更新を義務づけた理由

韓国国内のある役所。かつては在住外国人は各種の届け出を出入国管理局でしなければならなかった。しかし、近年では現住地の役所などで手続きが可能になった=原美和子撮影
韓国国内のある役所。かつては在住外国人は各種の届け出を出入国管理局でしなければならなかった。しかし、近年では現住地の役所などで手続きが可能になった=原美和子撮影
2018年10月30日
共同通信共同通信

 韓国では結婚などで同国に移住し、一定期間の在住と条件を満たした外国人に対して2009年から「F5ビザ」と呼ばれる永住権を与えている。韓国の国籍を取得しなくても永住権を取得すれば、参政権などには一部制限があるものの地方選挙への投票が可能になるほか、韓国の国民と同等の条件での就業や社会的信用が保証されるのである。

 だが、導入から10年目を迎えたこの「永住権」が現在、大きな転機を迎えている。

▼取得がもたらす安定

 韓国法務部の統計によると、17年の時点で韓国に在住する外国人は約117万人。この4年前の13年には約99万人であったことと比較すると、韓国在住の外国人は増加傾向にあると言える。韓国に滞在する事情はさまざまであるが、近年では特に韓国人との結婚に伴うものや労働者としてやってくるケースが目立っている。

 「結婚」または「労働」のいずれも、その多くはベトナムやカンボジア、ラオスといった東南アジアの出身者である。特に2000年以降、農村や地方での非婚者の増加やそれに伴う少子化を食い止めることを目的とした東南アジア出身の女性が国際結婚仲介業者などを通じて渡韓し、韓国人男性と結婚するケースが急増した。こうした背景から韓国では一つの家庭に複数の国籍や文化が存在することを指して「多文化家庭」という言葉が生まれたほどだ。

 永住権の発給が行われる以前、韓国に居住する外国人には韓国人と比べて、就業における待遇面でさまざまな差をつけられていた。さらに、携帯電話の購入やクレジットカードの発行に関しても制限があるだけでなく、その手続きも煩雑であるなど不便な面が多かった。それが、外国人居住者が増加したことや前述した「多文化」という言葉が定着したことが相まって、彼らの社会における立場の安定と向上を目的とした「F5ビザ」を09年から発給し始めたのである。

▼複雑かつ厳格

 09年当時、結婚に伴って韓国に住んで5年以上が経過していた筆者は「永住権」を得られるF5ビザを申請することを決めた。それまでは「結婚ビザ」とも呼ばれる「配偶者ビザ」を持っていた。しかし、2年ごとに更新しなければいけないだけでなく、旅行や日本への一時帰国などで韓国から出ると再入国の際に「再入国許可証」を取得しなければならないなど、“使い勝手”が良いとはとても言えるものではなかった。

 在住外国人にとって出入国管理局に度々足を運ばなくてはならないことは手間がかかる。さらに、生活基盤が韓国にありながら就業の面などにおいても制限が多く大変だった。ところが、F5ビザを申請した際にはかなりスムーズになったと感じた記憶がある。具体的には、申請書や日本で言う戸籍や住民票、世帯主(配偶者)の財力証明の書類等を提出し、出入国管理局の担当者との面談を行う必要はあるが、F5ビザの申請・発給が開始された当初早ければ3カ月ほどで取得ができた。

 ところが、それが変わってきているのだ。申請者本人および配偶者の身元や経済力を証明する書類を始めとして提出が求められるものが多くなっただけでなく、申請者の韓国語能力を証明する韓国語能力試験の受験が義務化されている。厳密になった結果、申請と審査から発給まで半年から1年近くも掛かるようになっている。

▼問われる「永住権」の意味

 厳しくなったのはそれだけではない。今年2月には国会で出入国管理法の改正案が可決したのだ。これによって、既にF5ビザを取得している外国人は10年ごとの永住権更新を義務付けられることとなった。

 当然のことながら、今回の変更については既に永住権を取得している外国人たちから戸惑いと不満の声が上がっている。韓国人の夫を持つ40代の日本人女性は「永住権を持つことによって煩わしかった更新手続きの手間がなくなったはずだったのに、ここに来てまた更新手続きをしなくてはいけないことは正直、永住権の意味があるのかと疑問だ」と語る。

 また、同じく永住権を持つ30代の中国人の女性は「(日本の法務省に当たる)法務部からの通知が届いている人と届いていない人がいたり、出入国管理局に問い合わせをしても対応する職員によって回答が曖昧だったりと非常に不親切だ」という声も聞かれる。

 「永住権」であるはずのF5ビザの更新を義務化する事情について、法務部は次のように説明している。

 韓国のF5ビザがアメリカやカナダ、オーストラリア、日本の永住権と異なり、これまで更新期限を設けていなかったことから「永住権」を持つ在住外国人の転出や死亡などを含めた推移をはっきりと把握できていなったことがあり、更新を義務付けることによって、居住外国人の管理や把握をしやすくなる―と。

 日本でも“移民”受け入れ政策や外国人の雇用の積極化が叫ばれ始めているが、韓国は日本を超える早さで少子高齢化が進み、先を見据えた労働力の確保や外国人の増加に伴う管理体制なども課題となっていると言える。韓国の「永住権更新制」が今後どのように定着していくか注目すべき点であると思う。(釜山在住ジャーナリスト・原美和子=共同通信特約)

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