【世界から】NZ、世界で初めて女性参政権を認めた国の現状は

女性参政権運動を率いたケイト・シェパード(左から5番目のいす着席者)と1896年に行われた「ナショナル・カウンシル・オブ・ウィメン」の第1回会合参加者(C)Archives New Zealand used CC BY 2.0
女性参政権運動を率いたケイト・シェパード(左から5番目のいす着席者)と1896年に行われた「ナショナル・カウンシル・オブ・ウィメン」の第1回会合参加者(C)Archives New Zealand used CC BY 2.0
2018年10月23日
共同通信共同通信

 9月19日、ニュージーランドは全国的に祝賀ムードに包まれた。125年前のこの日、21歳以上の女性が議会選挙に投票できる権利を定めた法律が成立したのだ。女性の参政権は現在では当たり前のことといえるが、女性が参政権を獲得したのは、1893年のニュージーランドが世界初だった。

 各都市でイベントが開かれる中、国会議事堂がある首都ウェリントンでもさまざまな行事が行われた。社会に貢献した女性を招待し、首相自らが苦労をねぎらう懇談会のほか、一般人も参加できるコンサート、国立博物館で関連の展覧会のオープニングなどが行われ、特に盛り上がりを見せた。さらに、性別による賃金差別があった際の不服申し立てをしやすくするための法案も議会に提出され、お祝い気分に花を添えた。

▼自立する現代女性

 ニュージーランドで暮らしていて感じるのは、日常生活において女性が行うことが男性と大差ないということだ。自宅のDIYや芝刈り、車の簡単な修理など、男性の仕事というイメージがあることも難なくこなす。家庭を最優先にしながらも、子どもの手が少しでも離れれば、社会復帰する。確固たる自分の意見を持ち、それを人前で話すことをはばからない。まさに「自立」という言葉がぴったりくる。

 また、ニュージーランド女性は女性の活躍をおおいに応援・支持する。同国3人目の女性首相となったジャシンダ・アーダーン首相の当選を、過去の女性首相2人の時と同じように大歓迎した。女性を中心とするアーダーン首相の熱烈な支持者を意味する「ジャシンダ・マニア」という呼び名まであるほどだ。当選後、妊娠・出産・産休を経て、現在は育児中のアーダーン首相に等身大の女性としての執政を期待する声が大きい。

 ニュージーランドは、世界経済フォーラムが、男女格差を測った報告書、「グローバル・ジェンダー・ギャップ・リポート2017」で、144カ国中9位と健闘している。125年前の女性参政権運動の精神は、この国の下地として生きているといえそうだ。

▼依然、社会に影を落とす飲酒問題

 1893年当時、ニュージーランド女性が有権者として政治に参画しようとしたきっかけとなったのは「アルコール問題」だった。男性による、アルコールの過度な摂取が日常化し、家庭内暴力やネグレクト、貧困、病気が社会に暗い影を落としていたのだ。また、教育や雇用の一部において女性への門戸が閉ざされてもいた。自分たちが立ち上がるしかないという考えに至ったのは、米国で創設された世界初の女性団体「キリスト教婦人矯風会」の影響もあった。

 残念ながら、ニュージーランドは女性の社会参加のきっかけになったアルコール問題を依然として抱えている。15歳以上の国民1人当たりの年間アルコール消費量は9.24リットル。英国やヨーロッパ諸国よりかなり少ないが、自分の意思で短時間に過度な飲酒をする、「ビンジ・ドリンキング」と呼ばれる飲み方がまん延し、トラブルのもととなっている。その深刻さは、ニュースでアルコールがらみの事件を見聞きしない日はないことからも明らかだ。

 アルコールは諸悪の根源だ。国民の健康促進を具体的に進めるための独立行政法人である「ヘルス・プロモーション・エージェンシー」がまとめた情報によれば、家庭内暴力の3件に1件、深刻な暴行事件の2件に1件、交通違反の4件に1件で飲酒が原因になっている。毎年アルコールが原因の疾病やけがで早死にする人は約1000人。火災による死者の45%にもアルコールが関係している。

▼さらなる意識改革を

 雇用問題も、125年前から持ち越している。「グローバル・ジェンダー・ギャップ・リポート2017」においては、「同種業務での給与格差」の項目で0.0755(数値が1に近づくほど格差が少ない)と、世界22位。統計局発表の性別による賃金格差の割合は現在9.2%と、過去20年で2番目の低さに踏みとどまっている。しかし、マーケティングリサーチの大手、カンター・グループが18年に調査を行ったところでは、格差はどの業界でも依然として根強いという。

 賃金格差の解決策の一つとして、ニュージーランド国内で頻繁に挙げられるのが、企業における女性の経営陣への登用だ。現在は約20%の割合だが、最低でも議会並みに約40%を目指すべきといわれている。

 しかし、女性幹部の割合はそう簡単には上がらない。男女格差が縮まりつつあるとはいえ、性別役割分業意識には依然として改革の余地があるからだ。男女同権運動を率いる「ナショナル・カウンシル・オブ・ウィメン」は、仕事と家庭の両立でプレッシャーを感じている女性が全体の約半数に上ることを明らかにしている。まだ女性が男性とまったく同様に働くまでの社会には至っていないのだ。国内初の女性首相、ジェニー・シップリー氏は、「女性をプレッシャーから解放するには、社会全体の意識改革をさらに進めることが必要」と指摘する。

 記念イベントに参加した女性たちの多くはにこやかに「新しく生まれ変わった気分」「前進するためのパワーをもらった」と話す。その一方で、次世代を担う女子高生たちは口をそろえて「まだまだ問題は山積している。解決には私たちが努力していかなくてはならない」と真剣な表情で語った。150周年、そして175周年を祝う時に、ニュージーランドの男女格差はどこまで縮まっているだろうか。(ニュージーランド在住ジャーナリスト クローディアー真理=共同通信特約)

共同通信共同通信

国内外約100の拠点を軸に、世界情勢から地域の話題まで、旬のニュースを的確に、いち早くお届けします。

https://www.kyodonews.jp/

47リポーターズの注目記事

廃線から25年で残る架線に感動
12月02日
47NEWS47NEWS
消えた捜査ファイル、死んだはずの「主犯」遺体は別人か…中村哲さんを殺害したのは誰なのか 30年交流の記者、3年の現地取材報告(下)―安井浩美のアフガニスタン便り
12月04日
47NEWS47NEWS
大量の身元不明遺体に立ち向かうプロ集団、震災から11年の日本の現状嘆く 「身元特定は人権問題」ウクライナ支援のメンバーも
10時00分
47NEWS47NEWS
犯人逮捕直前、担当刑事は政権に不当拘束された…中村哲さんを殺害したのは誰なのか 30年交流の記者、3年間の現地取材報告(上)―安井浩美のアフガニスタン便り
12月03日
47NEWS47NEWS
こたつで味わう鍋、伊勢エビにカマンベールチーズ…んっ? 「さとふる」が仕掛ける一見ミスマッチなご当地特産コラボ【にっぽん食べ歩き】
12月03日
47NEWS47NEWS
「戦後最悪」の日韓関係に改善の兆し、徴用工問題を解決し正常化に向かえるか 尹徳敏・駐日韓国大使に聞く
12月02日
47NEWS47NEWS
  • 共同通信会館
  • 地域再生大賞
  • ふるさと発信
  • 弁当の日
  • 共同通信会館
  • 地域再生大賞