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【第38回】「テロ宗教ではない」 普遍的平等、分かち合い  日本人がイスラム広報

2017.9.23 0:00
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無料見学会の参加者に礼拝堂の説明をする下山茂さん。「礼拝では(両手を下から耳の横まで上げる)最初のポーズで仕事のこととか、家のこととか、全部後ろへやって、神と向き合う。イスラムは形の宗教」=8月13日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)
無料見学会の参加者に礼拝堂の説明をする下山茂さん。「礼拝では(両手を下から耳の横まで上げる)最初のポーズで仕事のこととか、家のこととか、全部後ろへやって、神と向き合う。イスラムは形の宗教」=8月13日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)

 東京都渋谷区の小田急線代々木上原駅から数分歩くと、ドーム形の屋根やミナレットと呼ばれる細長く、とがった塔が見えてくる。東京ジャーミイ。トルコ語の「ジャーミイ」はイスラム教の大きな礼拝所(モスク)を意味する。土日は午後2時半から予約不要の無料見学会があり、日曜日の8月13日は約80人が集まった。女性が多い。
 「イスラム教徒(ムスリム)は16億人。将来は現在22億人のキリスト教徒より多くなると言われているが、ごく一部のテロで『怖い』というレッテルを貼られている」
 1階のホールで広報担当の下山茂さん(68)が見学者に説明を始めた。
 

 ▽礼拝、心の糧に

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 東京ジャーミイの前身「東京回教礼拝堂」は、ロシア革命を逃れて日本へ移住したトルコ人たちによって1938年に建設された。老朽化して86年に取り壊されたが、トルコ政府の援助で2000年に東京ジャーミイとして再建されたという。
 続いて下山さんは、イスラムの国々で発明されたものを描いた世界地図を掲げる。コーヒー、カメラ、方程式…。「高度な文明を生んできた。イスラムも入れて世界を見てほしい」
 2階の礼拝堂へ。靴を脱いで入ると、カーペットが敷かれているだけで机や椅子はない。ムスリムは早朝、昼すぎ、遅い午後、日没後、就寝前の1日5回、聖地メッカの方角に向かい、唯一神アッラーに礼拝する。
 十数人による遅い午後の礼拝を見学。「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」などと唱えながら、直立で両手を耳の横へ、次いで両手を重ねて胸の前で組む。お辞儀の姿勢を取り、再び耳の横に両手。そして膝を折って額や鼻、手を床に…。
 「食事が体に栄養やエネルギーを与えるように、礼拝は心や精神の糧になる」と下山さん。「タイルなどにチューリップが描かれているのはなぜか」という見学者の質問には「一つの茎に一つの花しか咲かない。一神教を象徴する」と答えた。
 

 ▽人に優劣ない

 下山さんとイスラム教との出会いは、1969年にさかのぼる。早稲田大探検部でナイル川をゴムボートで下り、スーダンの村を転々とした。ムスリムが多い村で、寝床を提供してくれるなど親しくもてなされ、その優しい心に打たれた。
 「イスラム教の普遍的な教えは平等と分かち合い。皮膚の色や民族、言語、血筋、階層などで人に優劣をつけない。横一列で礼拝するのも平等。カトリックのようなヒエラルキーもない。余分な富は社会に還元し、格差を縮めるために使う」
 帰国後、下山さんはイスラム教の団体づくりに関わり、26歳の時に入信した。「必然だった」と振り返る。早大で同じクラスの男性は「大学へ来なくなり、それきりになったが、探検部でユニークな人だったことはよく覚えている」と語る。
 下山さんはその後、イスラム教の団体を離れ、テレビ局や出版社で働く。40代、50代は編集プロダクションで会社案内や学校案内を作っていた。
 2001年9月11日の米中枢同時テロ。「何をやっているのだ。大変なことになる。モスクに集まらないと」と思った。
 信仰心が高まり、東京ジャーミイへ通うようになった。ジャーミイの出版を手伝い、10年から専従の広報担当に。「日本では、信教の自由が保障され、イスラム教も選択できる。しかし、知らなすぎる。イスラムの真の姿を、テロの宗教ではないことを伝えたい」
 

 ▽「平安あれ」

礼拝堂からあふれ、テラスで金曜日の集団礼拝をするムスリムたち。Tシャツ1枚の若い男性も、スーツを着た年配の男性も横一列に並び、膝を折り、額や鼻、手を床に付けている=8月18日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)
礼拝堂からあふれ、テラスで金曜日の集団礼拝をするムスリムたち。Tシャツ1枚の若い男性も、スーツを着た年配の男性も横一列に並び、膝を折り、額や鼻、手を床に付けている=8月18日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)

 ムスリムに集団礼拝が義務付けられている金曜日の8月18日。東京ジャーミイの礼拝堂は満員となり、テラスに人があふれた。都内に住むトルコの人々や日本人数人のほか、留学中のセネガル人や群馬県から来た実習生のインドネシア人。
 「一家で旅行中」という中国・雲南の男性には男の子が寄り添う。妻は女性用のスペースへ。旅行者はフランスやパキスタンからも。バングラデシュの男性は「国際協力機構(JICA)で研修中」と話した。
 午後0時45分、集団礼拝の始まりが告げられ、イマーム(指導者)が聖典コーランの一節を引いて説教する。善行や誠実を求めているようだ。
 同1時15分から、700~800人が一斉にいつもの礼拝に。テラスのカーペットが足りず、段ボールを敷く人もいた。
 礼拝が終わると、ここはコミュニケーションの場。「アッサラーム・アライクム(あなたに平安あれ)」と声を掛け、手を差し出すと、初対面でも「アレイクム・サラーム(あなたにこそ)」と言って手を握り返す。
 「黙っていたら、敵か味方か分からない。『平安あれ』と手を伸ばしてみる」と下山さん。「日本は欧米ばかりを手本にしてきたが、世界宗教のイスラム教から学ぶことはたくさんあるはずだ」(共同=竹田昌弘)

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