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ジェンダー平等を象徴  日本、もう戻れない 小笠原悦子順天堂大大学院教授 リレー評論「解読オリンピック」

2021.7.30 11:00 共同通信

 東京五輪の開会式では、男女1人ずつ選ばれた旗手が晴れやかに各選手団を先導した。国際オリ

 
小笠原悦子・順天堂大大学院教授
小笠原悦子・順天堂大大学院教授

ンピック委員会(IOC)が男女1人ずつの旗手を起用できる新ルールを今回から適用したためだ。ジェンダー平等をさらに進める決意の象徴に見えた。


 IOCが女性への門戸拡大を柱の一つとしたのは1996年。第1回アテネ五輪から100周年が契機だった。各国・地域のオリンピック委員会(NOC)の役員に占める女性の比率を「2000年までに10%以上とし、05年までに20%に引き上げる」との数値目標を掲げた。


 中心となって動いていたのが、当時は唯一の女性理事だった米国のアニタ・デフランツさん(68)だ。


 だが、目標はなかなか達成できなかった。スポーツの世界はどこも「男性社会」。内部から改革するのは難しい。デフランツさんたちは、同じような活動を進める国連などの組織と連携を進めた。


 女性進出やジェンダー平等を世界の大きなうねりとしてとらえ、IOCなどスポーツ界を、そのうねりに巻き込んだのだ。時間はかかったが、この作戦は成功した。


 IOCの「ジェンダー平等の改革プロジェクト」は3年前に、「競技」「人事」など5項目について、具体的な目標を打ち出した。「すべて達成された時、IOCにジェンダー平等がもたらされる」という考え方だ。


 今年3月にまとめた新指針「五輪アジェンダ2020+5」にもジェンダー平等の理念を、ちりばめるように盛り込んだ。


 日本のスポーツ界はこの潮流に乗り遅れた。いや、むしろ「知ろうとしなかった」と言っていい。そんなスポーツ風土から東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言が生まれた。


 森氏の発言は国内外から大きな非難を浴び、日本のスポーツ界は半ば強制的に前に進んだ。組織委も日本オリンピック委員会も理事の女性比率は40%を上回った。


 場当たり的だという批判もある。しかし女性進出が進んだ事実は重い。以前のような男性優位の日本にはもう戻れない。戻ることは許されない。


 大きな仕事をやり遂げたデフランツさんは、IOCの一線を退く。東京五輪の開会式をバッハIOC会長の隣で見ていた彼女の目に、選手たちの入場行進はどう映っただろうか。


 指導的立場に立つことに不安を持つ女性も多いかもしれない。でも、覚悟を決めよう。扉が開きかけている。新しいスポーツ界はすぐそこにある。
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 おがさわら・えつこ 1958年生まれ。米オハイオ州立大大学院博士課程修了。学術博士。専門はスポーツマネジメント、女性スポーツ。順天堂大大学院教授。水戸市出身。