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【編集後記】Vol.326

2020.3.26 11:28 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
関東大学リーグ1部TOP8への復帰を決めた桜美林大戦後の宮川泰介さん(91)ら日大の4年生=2019年12月1日、横浜スタジアム
関東大学リーグ1部TOP8への復帰を決めた桜美林大戦後の宮川泰介さん(91)ら日大の4年生=2019年12月1日、横浜スタジアム

 

 いけないと思いつつ、周りの咳やくしゃみに過剰に反応するストレスフルな世の中になってしまった。

 

 世界中に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、2020年東京五輪・パラリンピックが延期を余儀なくされた。

 プロ野球は開幕のタイミングを模索し、Jリーグは5月に再開する予定だという。日本社会人Xリーグは、春の公式試合を全て中止すると発表した。

 前例のない非常事態は、スポーツの試合などの開催自粛だけでなく、学校の卒業式やその先にある入学式の実施にも影響を及ぼしている。

 

 東京の日本武道館で卒業式を行う大学は多い。日大もその一つで、毎年3月25日と決まっているが、今年は他大学と同様に学部校舎などで規模を縮小した〝式典〟にしている。

 

 「危険な反則タックル問題」で、2年前は公式試合への出場資格停止、昨年は関東大学1部下位リーグのBIG8から再出発した「フェニックス」の2019年度の4年生が、大学生活を終えた。

 副将を務めたDL宮川泰介さんもその一人だ。

 

 後悔、懺悔そして待っていてくれた仲間や支えてくれた周囲の人たちへの感謝の気持ち。宮川さんが、この約2年間をどんな思いで過ごしてきたかは知る由もなく、今後尋ねることもないだろう。

 

 検察の不起訴の判断が示されて、昨秋のリーグ戦の終盤2試合に出場した。

 TOP8への復帰を決めた桜美林大との試合後、後輩を上位リーグに引き上げる責任を果たした副将としての安堵感が、その表情ににじんでいた。

 

 一度はフットボールから離れる決心をした宮川さんに寄り添い見守ってきた日大の橋詰功監督は、「彼の人生はこれからですから」と言った。

 Xリーグでフットボールを続ける教え子に、人間としてさらに成長してほしいとエールを送る。

 

 桜咲く春。我慢と苦労ばかりだった4年生の門出は、もっと晴れやかな雰囲気の中で迎えさせてあげたかった。それだけが残念だ。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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