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QBブレイディは2年契約55億円 注目の後継者は誰に?

2020.3.24 11:58 生沢 浩 いけざわ・ひろし
今年1月、ポストシーズンに向けた記者会見で質問に答えるトム・ブレイディ(AP=共同)
今年1月、ポストシーズンに向けた記者会見で質問に答えるトム・ブレイディ(AP=共同)

 

 ペイトリオッツで6度のスーパーボウル優勝を経験したQBトム・ブレイディが、バッカニアーズと総額5000万ドル(約55億円)の2年契約を正式に交わした。

 これによって過去12年間プレーオフから遠ざかっているバッカニアーズの人気はうなぎ登りとなり、試合の入場チケットの売り上げも上々だという。

 

 2020年度のスーパーボウルがバッカニアーズの本拠地であるフロリダ州タンパで行われることから、地元チームがスーパーボウルに出場できないというジンクスがブレイディによっていよいよ破られるのではないかという期待が早くも持ち上がっている。

 

 一方で気になるのがペイトリオッツにおけるブレイディの後継者だ。

 現在ペイトリオッツにはNFL2年目を迎えるジャレット・スティダム、5年目のコディ・ケスラーが在籍しており、さらにペイトリオッツでのプレー経験のある34歳のブライアン・ホイヤーを1年契約で獲得した。

 

 昨年のドラフト4巡で入団したスティダムは実戦経験がほとんどなく、昨年の記録は3試合に出場し、4試投で2回のパス成功、1回の被インターセプトというものだった。

 ケスラーはブラウンズとジャガーズで先発経験があるものの、移籍1年目の昨年は記録なし。短期でいろんなチームを渡り歩く、いわゆるジャーニーマンだ。

 

 最も実戦経験が豊富なのはホイヤーだが、過去11年はほとんどがバックアップとしてのキャリアだ。いずれもブレイディの比較対象になるQBではない。

 

 4月のドラフトで人材を求める可能性もあるが、指名順位は高くなく、NFLほどパスを使わないカレッジフットボール出身のルーキーを先発起用できるほど、ペイトリオッツのパッシングスキームは易しくない。

 

 現在フリーエージェント(FA)となっている選手のなかではキャム・ニュートン(前パンサーズ)やジェーミス・ウィンストン(前バッカニアーズ)といった元ドラフト全体1位指名QBや、ベンガルズで先発を務めてきたアンディ・ダルトンらが獲得可能だ。

 しかし、現在に至るまでペイトリオッツが獲得に乗り出していないということは彼らは「ポスト・ブレイディ候補」とは言えないのだろう。

 

 ビル・ベリチックHCはチームのスキームへの理解度を重んじる。それをQBに当てはめるならばスティダム、ケスラー、ホイヤーの3人にポジション争いをさせることは十分に考えられる。

 この際、ベリチックHCの頭のなかでは先発経験はそれほど重要ではないのかもしれない。そう思わせるのは2008年シーズンが根拠だ。。

 

 この年、ブレイディは開幕戦で膝の靱帯を断裂する重傷を負い、そのままシーズンを棒に振った。

 ブレイディに代わって先発を務めたのは、それこそ無名のマット・キャッセルだった。しかし、ペイトリオッツはプレーオフこそ逃したものの11勝5敗の成績でこの難局を乗り切ったのだった。

2019年シーズンのプレーオフでタイタンズに敗れ、ロッカールームに引き揚げるトム・ブレイディ(AP=共同)
2019年シーズンのプレーオフでタイタンズに敗れ、ロッカールームに引き揚げるトム・ブレイディ(AP=共同)

 

 この時に評価されたのがジョシュ・マクダニエルズ攻撃コーディネーター(OC)のオフェンスシステムだ。

 いろんな場面に応じて個々の選手に求められる動きや考え方が確立されているので、ある程度のレベルのスキルを持っているQBならこなせるというのがその評価の理由だ。

 つまり、ブレイディほどの冷静さやパスの正確さ、経験がなくてもペイトリオッツのオフェンスは「一定程度の」生産性を維持できるということだ。

 

 そう考えるならば、ベリチックHCのQBにNFLでの経験よりもペイトリオッツのスキーム把握力を優先する方針には納得がいく。

 もっとも、筆者が例に出したシーズンは既に12年も前のもので、当時とはNFLのトレンドも大きく変わっている。

 マクダニエルズOCのスキームもベリチックの考え方も当時のままではないはずだ。2020年なりのスキームと方針がペイトリオッツにはある。

 

 それがブレイディ不在のチームでどのように機能するのか。いや、どのように機能させるのか。

 ベリチックHCと、その後継者と目されるマクダニエルズOCの腕の見せ所だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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