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【編集後記】Vol.325

2020.3.19 14:43 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
昨シーズンのレッドスキンズ戦でTDパスを決めて喜ぶQBトム・ブレイディ(AP=共同)
昨シーズンのレッドスキンズ戦でTDパスを決めて喜ぶQBトム・ブレイディ(AP=共同)

 

 NFLのスーパースターQBトム・ブレイディが、20シーズンを過ごしたペイトリオッツを去り、バッカニアーズに移籍することになった。

 42歳の決断は米国内だけでなく、日本のファンにも大きな衝撃を与えた。

 

 彼はペイトリオッツで選手生活を終えるものだと思っていた。しかし、オフに入ってSNSで現役続行への意欲を示していたこともあり、その動向に注目していた。

 サラリーキャップ(選手の年俸総額に一定の上限を設ける)との兼ね合いもあり、フォックスボロを離れる日が近いという予感もあった。

 

 弱小チームだったペイトリオッツを6度のスーパーボウル優勝に導き、自身は4度のMVPに輝いた。

 2000年のドラフトでは6巡、全体の199番目指名という低い評価がブレイディのエリートへの対抗意識を刺激し、ハードワークに駆り立てた。

 

 ミシガン大時代の映像の中に、緩んだ体で40ヤード走に臨むブレイディの姿がある。これをプロのスカウトが見れば、高順位でのドラフト指名は躊躇するだろう。

 

 ブレイディを初めて現地で取材したのは2001年シーズン。「米中枢同時テロ」の影響で、カンファレンスチャンピオンシップからスーパーボウルまでの期間が、それまでの1週間から2週間になるきっかけとなったシーズンだ。

 

 02年2月3日に行われた第36回大会の舞台は、ルイジアナ州ニューオーリンズ。

 エースQBドルー・ブレッドソーがレギュラーシーズン序盤で胸部に重傷を負い、控えのブレイディが第3週から先発し、チームをスーパーボウルに導いた。

 当時24歳のブレイディはラムズとの接戦を20―17で制す原動力になり、一躍スターダムにのし上がった。

 

 193センチ、102キロのポケットパサーは、激しいサックを浴びることはあるが、走り回る機動力がない分無理をしないので、大きな負傷が少ないとも言われている。

 時代をさかのぼれば、パッカーズのエースQBとして地元ファンに愛されたブレット・ファーブが、活躍の場を求めてグリーンベイを去っている。

 

 体力、スピードの衰えがそのままパフォーマンスに大きく影響するRB、WR、CBなどと違い、QBは経験とフットボールの理解力がものを言うポジションだ。

 通算のパス成功率が60%を超えるブレイディが、現役にこだわるのも理解できる。

二人三脚でペイトリオッツを支えてきたQBトム・ブレイディとビル・ベリチックHC(AP=共同)
二人三脚でペイトリオッツを支えてきたQBトム・ブレイディとビル・ベリチックHC(AP=共同)

 

 知将ビル・ベリチック・ヘッドコーチとのコンビ解消を嘆くファンも少なくないが、「自分は生涯一愛国者(Patriot)」という言葉を残し、主戦場を東海岸の北から南のフロリダへ移すブレイディのプレーは、今から楽しみだ。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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