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春は鍛錬の季節 努力を惜しまず体力向上を目指せ

2020.3.19 11:54 中村 多聞 なかむら・たもん
春季練習で体力向上を目指す、中村多聞さん(右端)が指導する早稲田大学ビッグベアーズの選手たち
春季練習で体力向上を目指す、中村多聞さん(右端)が指導する早稲田大学ビッグベアーズの選手たち

 

 フットボール選手として今の自分より高いレベルで活躍や成功をしたければ、テクニカルな練習やセットプレーの練習以外に、ウエートトレーニングや持久力向上鍛錬、スピード向上の鍛錬などの地味でキツい努力(これらを総称してフットボール用ストレングスと呼びます)が欠かせないのは僕だけの持論ではなく、コンタクトスポーツ業界では常識です。

 二昔ほど前は骨のスグ上が皮膚のガリガリな選手でもテレビで放映されるようなボウルゲームに登場していましたが、現在ではよほどの特殊能力がない限りある程度の筋肉量を持っていることが求められます。

 

 国内リーグで意識が高くしっかり体づくりをしているのは社会人の選手で、逆に学生さんは力も弱く筋肉量もまだまだの人が大部分です。

 これは僕の所属する早稲田大学ビッグベアーズだけのことではなく、リーグを見ていてそのように感じています。

 

 学生さんがどうして脆弱な体なのか? その原因を調査してみると、結局のところ鍛える時間を確保しておらず、本当に必要だと感じていないからでした。

 トレーニングのことや栄養のことに関心も知識もなく、なんとなく誰かのマネをしているようなしていないような。こうなってしまっている原因は大部分の学生さんの関心事が「作戦」に向いてしまっているためです。

 これは真のフットボールをご存知の指導者たちは、昔からずっと同じ悩みを抱えているはずです。

 

 また、大抵の組織では筋肉の大きな選手はあまりインテリジェンスが高くなかったり、テクニック的なレベルが低かったりで、「マッチョマン」が一概に尊敬の対象ではないことが挙げられると思います。

 

 フットボールは外から見ていると激しく危険なスポーツと思われがちですが、それは試合の日だけであって、通常のチームでは練習時にはそれほど強度の高い激突シーンを見ることはありません。

 それよりも緻密な「作戦」をしっかりと遂行できているかどうかにエネルギーのほとんどが費やされます。

 そしてそれがみんな大好きなのです。そんな時に、間違ったりミスをするのが決まって「マッチョマン」だったりするのです。

 

 我々指導する側も「少数派のミスをするマッチョマン」より「大勢のミスをしないガリガリ君」を高く評価せざるを得なくなり、組織としての体力レベルは「ガリガリ」が平均値となり、少々のガリガリでも特に問題視されずそのまま試合に登場します。

 

 近年はフィットネスブームですのでご存知の方も多いかもしれませんが、筋肉をほんの1キロ増やすためにしなければならない努力の量は尋常ではありません。

 日常的にフットボールの練習をしていると体重がみるみる減っていく現代の学生アスリートにとって、筋肉量アップは組織ぐるみ家族ぐるみでやるしか道はありません。

 

 個人レベルで、ちょっとプロテインやサプリメントを摂取していても全く効果はありません。

 数時間おきにタンパク質や栄養を大量に摂取し、気絶してしまうような高強度のトレーニングを毎日毎日繰り返した上で、心肺機能と持久力も向上させておかなければ消耗の激しい試合終盤に体が言うことを聞いてくれなくなります。フットボール選手は本当に大変です。

 

 大量の食事をし、激しいトレーニングを実行できる人の割合がチーム内で2、3割と増えてくればしめたものです。

 しかし、残念ながらどんなにチーム内でキャンペーンを張っても、くじけてしまう人がほとんどでしょう。地味な鍛錬というものはとにかくつらくて大変ですからね。

 

 ではその場合はどうすべきか。筋肉を分厚くするのはしんどいから嫌だ。ご飯は適量で結構です。そんなたくさん食べたくない。太ったら女の子にモテなくなるから嫌だ、という人や組織は、体を細くしてスピードと持久力で勝負する手もあるでしょう。

 米国プロフットボールのNFLや大学のNCAAではそんな甘い話は通用しませんが、日本の学生リーグならそれでもいけるかもしれません。

 

 サッカー選手のように試合の最後までフルスピードで走って走って走りまくれるようになれるほどの、いわゆる「走りモンのトレーニング」を、日本で一番のクオリティーで一番多くの量をこなしてみるのもいいかもしれません。

 

 最後の最後まで全く疲れず走りまくるチームを目指して、毎日倒れるほどの量を走るのは大変だと思います。

 中には体重が100、120キロを超える大柄な選手もいますので、とても大変です。僕も選手時代は98~110キロくらいでしたので、気持ちは分かります。

 

 リーグで一番の力持ちになりたいのか、一番の俊足になりたいのか、一番のテクニシャンになりたいのか、一番の持久力を手にしたいのか。どれかに決めてしんどい道を進むのは自分ですし、結果を受け入れるのも自分です。

 

 秋のシーズンが佳境には入って笑っているのか、努力不足を後悔しているのか。それは、それまでの取り組み方ではっきり差がついてしまいます。

 

 僕が高校生の頃に見た、甲子園ボウル直前のテレビインタビューで「これ以上の努力は無理なほどに練習してきた」と言い切った、日大フェニックスのQB氏の言葉は、今も僕の心に深く突き刺さっています。

 

 今は春休みですし、学生アスリートが徹底的に鍛えるには最適の時期です。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、春の交流戦もどうなるか分かりませんが、学生時代を振り返ったときに、自分を誇れるような時間を過ごしてもらいたいものです。頑張れ若者たち!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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