目指せ「宇宙の宅配便」 北海道の民間ロケット

濃霧の中、実験場から打ち上げられる小型ロケット「MOMO」。民間単独としては日本初となる高度100㌔の宇宙空間には到達しなかった=2017年7月30日、北海道大樹町
濃霧の中、実験場から打ち上げられる小型ロケット「MOMO」。民間単独としては日本初となる高度100㌔の宇宙空間には到達しなかった=2017年7月30日、北海道大樹町
2017年08月18日
共同通信共同通信

 濃い霧の奥から「ゴゴゴ」と突き上げるような音だけが響き渡った。

 宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」が北海道大樹町で7月末、自社開発した小型ロケット「MOMO(モモ)」を打ち上げた。機体は見えなかったが、待ちわびたファンたちはごう音の方角に向かい歓声を上げた。

小型ロケット「MOMO」のエンジン燃焼試験に成功し、大喜びするインターステラテクノロジズの稲川貴大社長(左から2人目)ら。社員14人の平均年齢は30歳と若い=2017年5月23日、北海道大樹町
小型ロケット「MOMO」のエンジン燃焼試験に成功し、大喜びするインターステラテクノロジズの稲川貴大社長(左から2人目)ら。社員14人の平均年齢は30歳と若い=2017年5月23日、北海道大樹町

 社員14人の小さな企業が、ロケット開発に挑んでいる。民間企業単独では日本初となる宇宙空間到達を目指したが、上昇中の通信トラブルで機体を緊急停止した。

 それでも稲川貴大(いながわ・たかひろ)社長は「想定外のことこそが成果。宇宙まであと一歩」。データを分析し、年内にも後継機を打ち上げる予定だ。

小型ロケット「MOMO」のエンジン燃焼試験で、ごう音とともに吹き出す燃焼ガス。宇宙空間到達に必要な120秒間の燃焼に成功した=2017年5月23日、北海道大樹町
小型ロケット「MOMO」のエンジン燃焼試験で、ごう音とともに吹き出す燃焼ガス。宇宙空間到達に必要な120秒間の燃焼に成功した=2017年5月23日、北海道大樹町

 国主導の宇宙開発は高性能ゆえに開発費も高額。一方「MOMO」はエンジンを自作し、機体には量販店やインターネットで購入できる既製品を活用してコスト削減を徹底した。

小型ロケット「MOMO」の水平に寝かせた発射台から見た景色。先端部分では従業員が台の調整について話し合っていた=2017年7月13日、北海道大樹町
小型ロケット「MOMO」の水平に寝かせた発射台から見た景色。先端部分では従業員が台の調整について話し合っていた=2017年7月13日、北海道大樹町

 同社は小型ロケットで実績を作った上で、今後の普及が見込まれる超小型衛星を打ち上げるロケットを開発する。「安価で高い利便性、性能は必要最低限」という看板を掲げ、2020年ごろの事業化を目指す。

報道陣に公開された全長約10㍍、重さ約1㌧の小型ロケット「MOMO」。高度100㌔を目標にしたことから漢数字「百」が名前の由来=2017年7月26日、北海道大樹町
報道陣に公開された全長約10㍍、重さ約1㌧の小型ロケット「MOMO」。高度100㌔を目標にしたことから漢数字「百」が名前の由来=2017年7月26日、北海道大樹町

 「理想は宅配便のように電話一本で打ち上がる人工衛星」と稲川社長。「誰も想像できない宇宙の使い方をしたい」と夢を追っている。(写真と文 武居雅紀・共同通信写真映像記者)

*写真・記事の内容は、2017年8月18日までの取材を基にしたものです

  • 2023年度全国学力テスト
  • 地域再生大賞
  • ふるさと発信
  • 弁当の日
  • 共同通信会館
  • 47PR 知っトク!情報発信!
  • 2023年度全国学力テスト
  • 地域再生大賞