メニュー 閉じる メニュー

楽しみな好カード 第54回スーパーボウル展望

2020.1.30 11:31 生沢 浩 いけざわ・ひろし
スーパーボウルに向けて調整するチーフスのエースQBマホームズ(AP=共同)
スーパーボウルに向けて調整するチーフスのエースQBマホームズ(AP=共同)

 

 2月2日(日本時間3日)に、フロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムで行われる「第54回スーパーボウル」で対戦するカンザスシティー・チーフス(AFC代表)とサンフランシスコ49ers(NFC代表)は、この大舞台での実績(チーフスは50季ぶり3度目の出場で優勝1度、49ersは7季ぶり7度目の出場で過去5度制覇)こそ違うものの共通する部分も多い。

 

 例えば今季のチーム作りの方針だ。ドラフトだけに頼らずこのオフにはフリーエージェントやトレードを積極的に使って「すぐに勝てるチーム」を作ってきた。

 DBタイラン・マシュー(チーフス)やWRエマニュエル・サンダース(49ers)のように、他チームなら高額な年俸や厳しい交換条件を嫌って敬遠しそうなベテラン選手も必要に応じて獲得してきた。

 プレースタイルではともにランオフェンスが強く、強力なパスラッシュを持つ。今回はこの試合の鍵を握る主要人物の比較をすることで、試合を展望する。

 

 ▽HC:アンディ・リード(チーフス)対カイル・シャナハン(49ers)

 ともにオフェンスの戦術にたけたHCでリードはパス、シャナハンはランを好む傾向がある。

記者会見で質問に答える49ersのシャナハンHC(AP=共同)
記者会見で質問に答える49ersのシャナハンHC(AP=共同)

 リードはQB育成に定評があり、イーグルスのHC時代はドノバン・マクナブを育て、マイケル・ビックを再生させた。チーフスではパトリック・マホームズの才能を高く買い、貢献度の高かったアレックス・スミスに代えて昨季から先発に起用した。

 「ハイアンドロー」と呼ばれる、フィールドの浅いゾーンとディープゾーンで平行にレシーバーを走らせるパスコースを好み、QBに複数の選択肢を与える。

 スーパーボウルはイーグルス時代の2004年シーズンに出場経験があり、ペイトリオッツに敗れている。

 シャナハンは父マイクの流れをくむオフェンス、すなわちランとプレーアクションパスを基本としたスキームを採用する。

記者会見で抱負を語るチーフスのリードHC(AP=共同)
記者会見で抱負を語るチーフスのリードHC(AP=共同)

 ただし、父がOLのカットブロックを多用したのに対し、シャナハンはアウトサイドゾーンを基本とし、ジェットスイープを多く取り入れるなど現代風なアレンジも加えている。

 HCとしてはスーパーボウル初出場だが、2016年シーズンにファルコンズの攻撃コーディネーターとして出場した。

 もっとも、この時は第3Q途中まで28―3と大量リードを奪いながらペイトリオッツにオーバータイムの末に逆転負けを喫するという苦い思いをしている。

 

 ▽QB:パトリック・マホームズ(チーフス)対ジミー・ガロポロ(49ers)

 マホームズは現在のNFLでも屈指の運動能力を備えたQBだ。肩が強く、多少崩れた体勢であってもロングパスを成功させる。

 パスラッシュをよけるためにサイドスローでパスを投げることもしばしばだ。しかし、ディフェンスが最も恐れるのはその脚力だろう。

 デザインされたランプレーはもちろん、スクランブルでも類いまれなスピードと抜群の体幹のよさでゲインを重ねる。彼を封じ込めるのは容易ではない。

 

 ドラフト1巡指名を受けた生え抜きのマホームズとは対照的に、ガロポロは2017年シーズン途中にペイトリオッツからトレードで移籍してきた。

 トム・ブレイディの控えで、実戦経験が少ない割にはパスを投げるタイミングや判断などにミスが少ない。2017年の終盤に先発のポジションを与えられ、負けなしの5連勝でシーズンを終えたことでチームの信頼を勝ち得た。

49ersオフェンスの司令塔QBガロポロ(AP=共同)
49ersオフェンスの司令塔QBガロポロ(AP=共同)

 期待された昨季は、序盤で膝の靱帯を損傷してシーズンを棒に振ったが、今季ポケットパサーとして復活した。

 プレーオフではわずかしかパスを投げていないが、強力なランオフェンスを背景に、安定したパス攻撃を展開する。

 

 ▽TE:トラビス・ケルシー(チーフス)対ジョージ・キトル(49ers)

 現在のNFLでトップ2のTEだといっても過言ではない。それだけ二人とも「完成」されている。

 レシーバーの本職としてのパスキャッチはもちろんだが、ランブロッキングでの活躍にも注目だ。

49ersのTEキトル(AP=共同)
49ersのTEキトル(AP=共同)

 あえて違いを言うならば、ケルシーはディフェンスの穴を見つけて走りこむことを得意としており、キトルは体格を生かしたランアフターキャッチが武器だ。

 

 ▽パスラッシャー:フランク・クラーク(チーフス)対ニック・ボーサ(49ers)

 クラークはこのオフにシーホークスから移籍してきたベテランパスラッシャーだ。

 スーパーボウルウイークでは昨年までチーフスに在籍し、昨季のAFC決勝のオーバータイムで痛恨のオフサイドを犯したディー・フォード(現49ers)を挑発するなど、ストレートな発言をすることでも知られている。

 シーホークス時代は思うように実力が発揮できなかったが、チーフスでスティーブ・スパグニューロ守備コーディネーターのスキームの下で開花した。

 

 ボーサはドラフト1巡指名の新人だ。49ersが全体2番目指名権を有していたからこそ獲得できたDEだが、彼がチームのパスラッシュに変革を起こした。

 パワフルなブルラッシュでOLを圧倒したかと思うと、素早い動きでループしてQBに襲い掛かる。ラン守備もうまく、新人王最有力候補だ。スター性もあって、スーパーボウルではぜひ注目してほしい選手の一人だ。

スーパーボウルで活躍が期待される49ersのDEボサ(AP=共同)
スーパーボウルで活躍が期待される49ersのDEボーサ(AP=共同)

 

 チームの総合力の比較は難しく、互角としか言いようがない。両チームの「勝ちパターン」が想像できてしまうのだ。

 ただ、スーパーボウルというのはえてして予想外のことが起きるものだ。なかでも多いのは注目選手として取り上げられる主力選手が全く活躍できない事態だ。

 

 昨年は、あれだけシーズン中に高得点を記録したラムズのQBジャレッド・ゴフとRBトッド・ガーリーがペイトリオッツディフェンスの前に完全にシャットアウトされ、TDゼロに抑えられた。

 一方のペイトリオッツもブレイディからTEロブ・グロンコウスキーへのパスがほとんど封じられた。

 

 今年のスーパーボウルでは49ersのRBラヒーム・モズタートのランが止められたり、マホームズが完ぺきにコンテイン(囲い込まれる)されたりといった具合に、今まで起きなかったことが現実に起きてしまう可能性もある。

 こうした不測の事態に陥ったとき、いかにプランB(次善策)に切り替えられるかが試される。そこまでの戦略を用意してきたチームが栄冠をつかむことになる。

 楽しみな好カードである。両チームのこれまでの戦い方にふさわしい、高度で魅力ある試合を期待したい。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事