メニュー 閉じる メニュー

現役続行に意欲 ペイトリオッツのスターQBトム・ブレイディ

2020.1.8 12:32 生沢 浩 いけざわ・ひろし
プレーオフのタイタンズ戦でパスを試みるペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)
プレーオフのタイタンズ戦でパスを試みるペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)

 

 NFLはプレーオフが始まり、ワイルドカードラウンド(1回戦)で昨シーズンのスーパーボウル覇者ペイトリオッツ(AFC東地区1位)がタイタンズ(同南地区2位)に敗れる波乱があった。

 ペイトリオッツが1回戦で敗退するのは2009年以来で、AFC決勝に届かずにシーズン終了となったのは8年ぶりだ。

 

 そのほかのプレーオフ第1週では、AFCでテキサンズ(南地区1位)がビルズ(東地区2位)をオーバータイムで下し、準決勝のディビジョナルプレーオフで第2シードのチーフス(西地区1位)と対戦する。タイタンズは第1シードのレーベンズ(北地区1位)に挑む。

 

 NFCではバイキングズ(北地区2位)がセインツ(南地区1位)を延長戦の末にアップセットして第1シードの49ers(西地区1位)との対戦を決め、シーホークス(西地区2位)はイーグルス(東地区1位)を倒してパッカーズ(北地区1位)への挑戦権を得た。

 

 あっけない敗退でオフシーズンを迎えることになったペイトリオッツだが、現地ではスターQBトム・ブレイディの去就が大きな話題となっている。

 というのも、2001年から先発QBを務めてきたブレイディのチームとの契約が今季限りで切れるからだ。

 NFLの年度が切り替わる3月18日までにペイトリオッツとの間に新たな契約が成立しなければ、ブレイディはNFLでの選手生活で初めてフリーエージェント(FA)となる。

 

 敗戦直後の記者会見で引退の可能性について聞かれたブレイディは「それは極めて低い」と現役続行の意思を明らかにしたが、同日にやはり会見に臨んだビル・ベリチックHCは「まだその話をする段階ではない」と言葉を濁した。

プレーオフ1回戦でタイタンズに敗れ、記者会見で表情を曇らせるペイトリオッツのベリチックHC(AP=共同)
プレーオフ1回戦でタイタンズに敗れ、記者会見で表情を曇らせるペイトリオッツのベリチックHC(AP=共同)

 

 脚に故障を抱えながらプレーしていたことを告白したブレイディだが、42歳の現在も目立った衰えは見られず、NFLトップクラスのパサーの実力を維持している。

 本人も主張するようにあと1、2年は現役を続けられるだろう。

 

 万が一ブレイディがFAとなればNFLは大騒ぎとなる。たとえわずかな期間であろうと高いレベルでプレーできるブレイディを欲しがるチームはいくらでもあるからだ。

 常識で考えるならばペイトリオッツがブレイディを手放すことはないだろう。しかし、必ずしもそうとは言い切れないのは、ここまでブレイディの契約延長をせずに来たのが異例中の異例だからだ。

 

 通常はどのチームも有力選手とは契約を1、2年残して延長を行うものだ。チームは選手がFAとなる前に囲い込むことができるし、選手も身分の保証を得られる。

 選手が最も恐れるのは契約の最終年に故障して「商品価値」が下がってしまうことだ。

 だからこそ、ブレイディほどの選手が契約延長をしないままに2019年シーズンを過ごしたことが不思議でならない。

 

 ペイトリオッツもいずれはQBの世代交代を迎えなければならない。ベリチックHCがその時が今だと判断すれば、ブレイディと決別することもあり得る。

タイタンズ戦の後、記者会見で質問に答えるペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)
タイタンズ戦の後、記者会見で質問に答えるペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)

 

 鍵を握る人物がもう一人いる。ジョシュ・マクダニエルズ攻撃コーディネーター(OC)だ。

 ペイトリオッツの「王朝時代」に大きな貢献のあったコーチで、他チームからHCの誘いが相次ぐ。今年もブラウンズから声がかかった。

 

 2年前にはコルツのHC就任がほぼ決まっていたにもかかわらず、土壇場で翻意した経緯がある。

 この際にはベリチックHCの後継を約束されたのではないかとの情報も流れた。ただし、今回ブラウンズとの交渉に応じることになれば、その黙契は無効だということになる。

 

 マクダニエルズOCが残留するか否かはQBの世代交代に大きく影響する。

 ブレイディを断念してQBの若返りを目指すならば、オフェンスシステムに定評があるマクダニエルズOCをチームに残したいだろう。

 

 2008年の開幕戦でブレイディが膝の靱帯を断裂してシーズン絶望となった際に、ペイトリオッツはプレーオフこそ逃したものの、控えQBマット・キャッセルを先発起用して11勝5敗の成績を残した。

 これはマクダニエルズOCの構築したオフェンスシステムが機能したからだと考えられている。

 現在49ersで活躍しているジミー・ガロポロが、ペイトリオッツ在籍時代に成長したのはマクダニエルズOCの手腕によるところが大きい。

ペイトリオッツの攻撃を支えるマクダニエルズOC(AP=共同)
ペイトリオッツの攻撃を支えるマクダニエルズOC(AP=共同)

 

 逆にマクダニエルズOCが退団するなら、彼に代わるオフェンスの頭脳ともいうべきブレイディは手放せない。

 ブレイディは若いレシーバーを育てられるQBで、選手でありながらコーチ的な役割も担う。ブレイディとマクダニエルズOCを同時に失えば、ペイトリオッツオフェンスは一から構築し直さなければならなくなる。

 引退したTEロブ・グロンコウスキーの穴も埋められていないペイトリオッツにその余裕はない。

 

 早くも敗退が決まったためにいろんな憶測が飛び交うペイトリオッツとブレイディ。それも常勝チームとそのエースQBであるがための宿命か。今年のオフはこの話題で持ちきりになりそうだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事