血縁超えた結びつきを模索 シェアハウスの拡張家族

2020年01月08日

シフトで〝家族〟たちと夕食を楽しむ平本沙織さん(右手前から3人目)と律樹ちゃん(左手前から2人目)。共同生活で出会ったカップルの間に生まれた赤ちゃんもいる。それぞれができることをして、子どもたちの面倒を見ている=2019年4月11日、東京都渋谷区
【カメラ目線】「時代のはざまで」(3)
音楽家や料理人、美容師に弁護士…。多彩な人々が、新たな家族となって一つ屋根の下に暮らす。平成が終わる2年前の初夏。再開発が続く東京・JR渋谷駅近くの総合ビルの中で、一風変わった共同生活が始まった。
シェアハウス「Cift(シフト)」。発起人の藤代健介氏(31)が目指すのは、住人が生活も仕事も分かち合う、血縁を超えた結びつき。「拡張家族」と呼び、意識し合える仲間を探して約500人と面談してきた。
都内でデザイン会社を夫と営む平本沙織さん(33)もその一人。長男律樹ちゃん(2)を連れ、週の半分を過ごす。夫は出張で不在がち。親も常に頼れない。保育所は電車で通わねばならず、満員電車でののしられたことも。「社会からはじき出される」疎外感が募った。
「子どもは大勢で育てよう」。地縁のない都会での子育てに苦労する母親に、夫の親友である藤代氏が呼び掛けた。夫が寛大にも送り出してくれたシフトには、悩みを分かち合える仲間がいた。
全19室は満室で、0~60歳まで約40人が入居中。家賃は20万円前後。同居4人で割れば都心では格安だ。全員が、住む場所を一つに定めない「多拠点生活」を送る。
共有スペースでは、毎日わいわい食卓を囲み、仕事もする。雑談がビジネスに発展することも。平本さんもここで知り合った経営アドバイザーを自分の顧客に紹介。そうして新事業の協力者となった人が、息子の面倒を見てくれる人にもなった。公私を超え、信頼できるつながりが生まれた。
「拡張家族」とは? みんなが考える。彼女にとっては、出産後に「諦めそうになったことに、また挑戦できる居場所です」
(共同=泊宗之)
*写真・記事の内容は2019年4月24日までの取材を基にしたものです。