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頸がんワクチン情報周知を 個別通知実施の自治体も 積極的勧奨中止6年

2019.12.17 0:00
 子宮頸(けい)がんを予防する「HPVワクチン」は接種費用が公費で賄われる「定期接種」の一つだ。しかし接種後に全身の痛みなど健康被害を訴える人が相次いだため、国は6年前、積極的な接種勧奨を中止した。70%以上あった接種率は今や1%未満と低迷。ワクチンの存在すら知らない人も増えている。「情報不足で接種機会を失わせてよいのか」。勧奨再開か否か、国が方向性を示さない中、実施主体である自治体の危機感は募る。接種対象者に個別通知を送るなど、独自に情報提供する動きも広がっている。
 
 

 


 ▽迫る期限
 「接種の呼び掛けではありません。今も定期接種の対象で、希望すれば無料で受けられることをお知らせしました」。千葉県いすみ市は今年7月末、高校1年の女子132人に、市が独自に作成した通知を郵送した。
 子宮頸がんが発生する仕組みや頻度、ワクチンの効果や副作用の解説、接種希望者に予診票を交付することなどを伝える内容だという。
 定期接種の対象年齢は小学校6年から高校1年まで。十分な効果を得るためには3回の接種が必要で、完了までに6カ月かかる。予算も限られる中、期限が迫る高1を最優先に情報提供した。
 「定期接種を知らずに高2になり、知っていれば受けたのにと悔やむ事態は避けたい」と健康高齢者支援課の担当者は話す。予診票交付は20件あった。本年度の接種はこれまでに延べ24件。2014年度以降の5年間で接種者が1人だったことを考えれば、通知の効果はあったと言える。
 ▽WHOは推奨
 子宮頸がんは性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で、子宮の入り口にがんができる。大抵は免疫がHPVを排除するが、感染状態が長く続くとがん化の可能性が高まる。日本では年間約1万人が発症し約3千人が死亡。20~30代の若い女性で急増している。
 ワクチンはHPVの感染自体を防ぐ。世界保健機関(WHO)が接種を強く推奨し、多くの国が導入しているが、日本では定期接種化のわずか2カ月後、国が自治体に、接種対象者への個別の案内など積極的勧奨を差し控えるよう勧告した。
 情報不足は認知度の低下を招く。厚生労働省が昨年10月、12~69歳の男女計2400人を対象に実施したアンケートでは、ワクチンの効果について「知らない、聞いたこともない」と答えた人が34%に達した。また、12~16歳の女子の45%が「分からないことが多いため(接種を)決めかねている」と答えた。
 ▽県も後押し
 危機感を強めているのはいすみ市ばかりではない。厚労省が今年8月に公表した調査結果によると、全国で少なくとも97の自治体が接種対象者に独自作成の案内などを送り情報提供していた。
岡山県作成の子宮頸がん予防に関するリーフレット
岡山県作成の子宮頸がん予防に関するリーフレット

 


 岡山県の独自リーフレットも注目される。「娘さんを持つ保護者の方へ」と題して8万5千部作成し、9月までに小中高校などで配布した。健康推進課は「本来は実施主体の市町村が情報提供すべきだが、市町村単独では動きにくい面もある。県が後押しできればと考えた」と説明する。
 このリーフレットについては、大阪地裁でワクチンの薬害訴訟を担当する弁護団が「接種を促す内容だ」と県に使用中止を申し入れたが、日笠さんは「あくまでも情報提供で勧奨ではない。問題はない」と話す。
 また東京、神奈川、千葉など関東の4都県と5政令市で構成する九都県市首脳会議は11月6日、ワクチンの取り扱いについて速やかに結論を示すよう厚労相に求めることを決めた。国のあいまいな姿勢に業を煮やした格好だ。(共同=赤坂達也)

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