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ドクターヘリの20年を語る 年間3万件に迫る実績 普及推進のNPO理事長

2019.12.10 0:00
 救命救急センターにヘリコプターが待機し、通報があれば救急現場に医療チームが駆け付けるドクターヘリは、東京都など3都県を除く全国に広がり、実績を積み重ねてきた。普及と発展を支えてきた認定NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」(東京)は今年、設立から20年。当初から役員として尽力してきた篠田伸夫理事長に、20年の歩みと、今後の課題、展望を聞いた。
 
 

 

 ▽特措法と負担軽減
 ―設立当時のドクターヘリを巡る状況は。
 1999年、二つの大学病院で試行的に始まったころは、救急医療と言えば救急車。ドクターヘリという名前も仕組みも知られていなかった。
 同年夏、日本の救急医療の専門家と先進的な欧州に視察に行き、通報を受けて直ちに医師や操縦士がヘリに乗り込んで離陸するのを目の当たりにした。医師が現場に急行し、素早い処置で患者を救う。日本でも役立つと確信し、帰国後、ネットワークの理事に就いた。
 ―全国に広がったきっかけは。
 当初は意義が広く認められていなかった。一方、自治体は大きな負担が強いられた。このため、法制化と負担軽減が課題だった。関係官庁や国会に働き掛け、2007年にドクターヘリ特別措置法が成立。09年には国の交付金制度が整い、今は地方負担の最大8割が手当てされる。
 ―それでも都道府県で取り組みに違いがある。
 都道府県の保健医療計画に位置付けてもらう必要があった。未導入の知事と面談し、必要性を訴えることで、徐々に広がり、今では全国で53機が配備され、年間3万件に迫る運航ができている。
篠田伸夫理事長
篠田伸夫理事長

 


 ―東京都にはドクターヘリがないが。
 「東京型」として、都内2カ所のヘリポートに中、大型の消防ヘリが常駐。病院に行き医師をピックアップして現場に向かう方式を取っている。ただ、それでは真のドクターヘリではなく、ヘリの迅速性が生かせない。次善の策として、救急車と合流する着陸地点を選びやすい小型ヘリの導入と医師の常駐が可能になれば迅速性は担保される。東京都医師会も同様の案を提言しており、ぜひ前向きに検討してほしい。 
 ▽救命に有効
 ―運航が増えた効果は。
 搬送された交通事故被害者をドクターヘリと救急車で比べると、ヘリ搬送の方が入院日数、かかった医療費ともに低いという結果が出て、ヘリの有効性が確かめられた。説得力がある結果だ。
 ―課題はあるか。
 幸いなことに死亡事故は起きていないが、安全運航はいつも課題だ。国は消防防災ヘリでは操縦士2人の「ダブルパイロット制」を柱とする安全基準を今年9月に通知した。ドクターヘリも無関係とは言えず、注視していきたい。ただ、操縦士不足もあり、制度としててこ入れが必要だろう。
 災害時にどのように航空管制するかも検討課題だ。東日本大震災や熊本地震では各地からドクターヘリが集まったが、どこが一元的に管制をするのか。こちらも国として考えるべきだ。
 
 

 


 ▽幅広い利用を
 ―ドクターヘリの今後の展望は。
 組織としての考えでなく私見だが、現状では夜間の飛行ができず、24時間対応になっていない。どのような配慮をすれば夜間も飛べるのか。実際に飛んでいるスイスなど諸外国の制度を研究したい。
 また、離島や過疎地の医療を考えると、救急出動だけでいいのかどうか。緊急性がなくても、要請によって外科医や麻酔医を送るような使い方もあっていい。地域医療の観点に立って考えたい。(共同=由藤庸二郎)

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