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「病、それから」真山亜子さん(声優) 語りで見つけた新境地

2019.11.29 15:29
 ハスキーボイスで、やんちゃな少年から魔法使いのおばばまで幅広い役柄をこなす声優真山亜子さん(60)の人生は病気続きだ。10代で良性腫瘍、30代で二つの難病。43歳で腸を一部切除し、以来ストーマ(人工肛門)と付き合っている。舞台で躍動する俳優は断念したが「語り」の表現を深め、情感込めた声の演技を観客に披露している。
 
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 小さい頃からお芝居好きで、大学では勉強もせず演劇ざんまいでした。でも高校時代からお尻の片側が硬くて体を曲げにくい、妙な症状があったんです。それが大きな良性腫瘍だと分かったのが20歳。手術で取ったら筋肉も減ってしまい、歩くとき右足を引きずるようになりました。

 ▽「声、面白いよ」 
 
 大卒後は小さな劇団で活動していました。20代の後半、膝下から足首が赤く腫れて化膿して、腫れが体のあちこちに広がっていきました。壊死(えし)性筋膜炎というそうで、入院し、傷んだ所にお尻の皮膚を移植する手術を受けました。
 もう舞台は無理かと落ち込んでいた時、バイト先の居酒屋でアニメ業界関係のお客さんが「君の声、面白いよ」と声優の仕事を紹介してくれました。女の人の甲高い声を「黄色い声」って言いますよね。だったら私は茶色かなっていうくらい、かわいくない声。ずっとコンプレックスでしたが、それが役に立つとは。
 徐々に仕事をもらえるようになると、今度は微熱や関節炎、下血など原因不明の不調が続々と出てきました。ステロイドを飲むと良くなり、減らすと悪化する。検査の結果、クローン病とベーチェット病と認定されたのは32歳でした。どちらも難病で、腸や粘膜などに炎症が出ます。
真山亜子さん
        真山亜子さん

 


 ▽助けられないかも

 34歳で同じ業界の人と結婚しました。翌年、体調が安定したかなと薬をやめたら、大量の下血で入院。この時は何とか回復したんですが、2002年の春、また通院をサボって薬を飲まないでいると、仲間との宴会の後、猛烈な腹痛と下血に襲われました。
 「人工肛門になるかも」と言われて手術室に入りましたが、そうならずに終了。でも麻酔から覚めて集中治療室でしばらく過ごしていると、手や足、頭までしびれてきました。腹膜炎で血圧が急低下したためで、再び全身麻酔で手術です。呼ばれた夫は医師から「助けられないかもしれません」と告げられたそうです。2度目の手術で小腸を1メートル、大腸を20センチほど切除され、おなかにストーマができました。
 ストーマのショックはそれほど大きくありませんでした。でも少し落ち着いてからは、腹部に着ける装具の扱いに慣れず、便が漏れたりストーマの周囲にひどい炎症が起きたりして大変でした。詳しい看護師さんの助言を受け、少しずつ解決していきました。
時代小説を語る真山亜子さん=2017年、東京都台東区(姜美善氏撮影)
時代小説を語る真山亜子さん=2017年、東京都台東区(姜美善氏撮影)

 


 ▽お客さんの前で

 語りを習い始めたのはストーマを造設する少し前のことです。病気で演劇の舞台は難しいとしても、やはりお客さんの前で何かやりたかったんでしょうね。朗読の一種ですが、時代ものを得意とする師匠からは「読むんじゃない。しゃべるんだ」と教わり、池波正太郎さんや山本周五郎さんの作品を語ってきました。
 最近は楽器の奏者やいろいろな分野の方と共演したり、オリジナルの物語を書いてもらったりと、活動の幅が広がってきたのがうれしくて。体調が悪く、起きるのがつらい日も結構ありますが、病気がなければ語りに出合うこともなかった。人と触れ合い、元気になれるこの活動を大切にしていきたいと思います。
 
(聞き手・吉本明美、写真・牧野俊樹、姜美善)

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