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広がるかドナー休暇制度 骨髄提供の負担軽減  導入470社に

2019.11.12 0:00
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病公表をきっかけに、骨髄移植や末梢(まっしょう)血幹細胞移植への関心が高まっている。骨髄バンクにドナー登録する人も急増した。ただ実際にドナーに選ばれれば、入院も含め10日ほど医療機関に足を運ぶ必要がある。仕事を休むのは勤労世代にとって大きな負担だ。そこで社員が安心してドナーの役割を果たせるよう、従来の年次有給休暇とは別に、有給の「ドナー特別休暇制度」を導入する企業が増えてきた。
 
 

 


 ▽職場の理解
 「上司からは業務の都合など細かい話は一切なく、『しっかりやってきてください』とだけ言われた。職場の理解と休暇制度のおかげで提供できました」
 ジブラルタ生命保険(東京)の河原田宏司さん(34)は今年5月、ドナー休暇を利用して骨髄を提供した。3泊4日の入院と、健康診断や採血などで計6・5日分の休みを取得したという。
 日本骨髄バンクによると、移植希望患者とHLA(白血球の型)が適合しドナーになると、確認検査や最終同意面談、骨髄や血液の採取前健診、採取のための入院、採取後健診などに10日前後が必要になる。だが、ドナー登録可能なのは18~54歳。企業の中核を担う年代とも重なり、休暇取得のハードルは高い。
 2018年度のデータでは、HLAが適合しながらドナー側の事情で提供に至らなかったケースの35%は健康上の理由だが、65%はそれ以外。このうちの45%は「仕事が休めない」といった「都合」の問題だった。
 ▽社会貢献を支援
 その打開策がドナー休暇制度。バンクの集計では10月8日現在で467の企業・団体が導入した。政府も企業に導入を働きかける考えで、今後の拡大が期待される。ちなみに国家公務員は人事院規則で規定済みだ。
 
 

 


 ジブラルタ生命保険の導入は05年8月にさかのぼる。ドナーになったときに給付金を受け取れる保険商品の取り扱い開始に合わせ、ドナーとして社会貢献する社員についても積極的に支援しようと休暇制度を整えた。
 広報チームの内田陽子さんによると、休暇は年間10日以内、半日単位で取得できる。12年以降だけでも河原田さんを含め社員8人が制度を利用し、このうち30~50代の男性5人が提供に至った。
 同社は12年、献血バスを使った社内献血会で初めて骨髄ドナーの登録会も同時開催した。2日間で200人以上が登録、河原田さんもその1人だった。「それまで献血の経験もなかった。会社の取り組みがなければ登録も提供もしなかったと思う」と振り返る。
 ▽実情に合わせ
 2月の池江選手の病気公表を受け、制度導入に踏み切った企業もある。ポンプ製造の最大手、荏原製作所(東京)は競泳日本代表の公式スポンサーということもあり「会社の上層部からも一般社員からも、池江さんや白血病の患者さんたちのために何かできないかという声が上がった」(小林隆介人事部長)。
 動きは速かった。社員にドナー登録を推奨すること、さらに無給の短期ボランティア休暇を有給のドナー休暇に改めることを決めた。3月に社内に周知し、4月には本社と国内3工場で開催した献血会でドナー登録も実施、94人が登録した。
 休暇は「必要に応じた日数」を取得できる。利用した社員はまだいないが、今後も献血会と併せ年1回の登録会を継続していきたいという。
 今春、日本骨髄バンクで初のドナー休暇制度専任となった喜田芳之広報渉外部主幹は「会社にはそれぞれ企業文化や事情がある。一社一社訪問して、実情に合った、よりよい制度導入を提案したい」と話している。(共同=赤坂達也)

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