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希少疾患の診断手助け 世界のデータ活用  遺伝子・症状・顔つき…

2019.11.5 0:00
 患者数が少ない希少疾患にかかった人は、正しい診断や治療になかなかたどり着けず、悩むことが多い。診療経験のある医師も少ないためだ。状況を改善しようと、遺伝子や症状、顔の特徴など、世界で蓄積された膨大なデータを活用し、診断の手助けをするシステムの開発が進んでいる。

 ▽何年もかかる
 希少疾患は世界で6千~7千種類、患者数は計3億人を超えると推定されるが、各疾患の患者は少なく、情報が乏しい。日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は「複数の病院を回り、診断まで何年もかかることがよくある」と言う。
 希少疾患の多くは遺伝子が関係するとみられるため、診断に向けて、遺伝子の変異を探す検査が行われることが多い。解析技術の進歩で、1人の患者から、病気に関連しそうな遺伝子変異が一度に数十~数百個も見つかるようになった。
 だが、そこから原因を絞り込むには、世界中の医学論文を調べて症状との関連を探す必要があるため、膨大な手間と専門知識が求められる。東京医科歯科大の宮冬樹講師(疾患遺伝学)は「時間を短縮しながら診断に結び付けるのは難しい」と話す。
 2015年には国内の大学病院などが連携し、かかりつけ医から紹介された患者の遺伝情報をさまざまな専門家が検討する枠組み「未診断疾患イニシアチブ」ができたが、診断がつく確率は40%弱にとどまる。
症状や遺伝情報から病名の候補を検索できるシステムについて説明する「ライフサイエンス統合データベースセンター」の藤原豊史特任助教
症状や遺伝情報から病名の候補を検索できるシステムについて説明する「ライフサイエンス統合データベースセンター」の藤原豊史特任助教

 


 ▽大規模DB
 そこで、文部科学省所管の「ライフサイエンス統合データベースセンター」は、遺伝子と症状を結び付けた大規模データベースシステムを開発している。希少疾患のリストや病気に関わる遺伝子のデータ、約30万件の症例報告を結合したもので、必要情報を入力すると、病名の候補を可能性の高い順に表示する。
 「血糖値を下げるインスリンの濃度が高い」として東京大病院に紹介された30代の女性は、肥満ではなく、体調も悪くない。ただ月経がない期間があった。
 遺伝子に原因があるかもしれないと考えた糖尿病・代謝内科の細江隼医師はこのシステムを使い「インスリン濃度が高い」「月経が無い」といった症状と遺伝子変異の情報を入力して検索。すると、四つの病名候補が挙がった。遺伝の専門医とも議論した上で、体内のインスリンがうまく働かないため血糖値が不安定になる「インスリン受容体異常症」と診断。定期的に血液検査をし、必要に応じてインスリンが効きやすくなる薬を使うことを検討する、との治療方針が決まった。
 システム開発に当たった同センターの藤原豊史特任助教は「かなり高い確率で、正しい病名が候補のトップに挙がってくるようになってきた」と語る。
 
 

 


 ▽特徴を学習
 人工知能(AI)を使った医療技術を開発する米企業FDNAは、顔の画像から病名を探すスマートフォンアプリを開発した。〓(順の川が峡の旧字体のツクリ)や額の膨らみ、鼻の低さといった特徴が診断のヒントになる場合がよくあるためだ。
 15万人以上の患者の顔写真から特徴を学習したAIが、カメラで撮影した患者の顔を解析、病名候補を選び出す。同社によると、7500以上の病気が登録され、約130カ国の病院や研究機関で利用されている。
 辻さんは患者の立場から「早く診断できれば、病気の進行防止や治療効果の向上が望める」と話し、こうしたシステム開発が進むことを歓迎する。現状では治療法が見つかっていない希少疾患も多いが、辻さんは「診断がなければ治療法の有無すら分からない」として、まずは早期診断研究の広がりに期待を寄せている。(共同=岩村賢人)

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