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透析が必要と言われたら 療養の不安に答える  患者が経験を基に冊子

2019.10.29 0:00
 「そろそろ人工透析が必要です」。そう言われたときに、多くの患者は戸惑いとともに、その後の療養生活に強い不安を覚える。そうした経験をした患者自身が、これから透析に入る人のために、知っておくべき基本的な知識と生活の心構えをまとめた冊子「患者がつくった透析のほん―はじめての透析」が完成した。製作スタッフや監修した医師、冊子を初めて読んだ透析患者にそれぞれの思いを聞いた。
 ▽段階ごと3分冊

 この冊子は、透析患者同士の情報交換や透析に関する情報の普及啓発のためのウェブサイト「じんラボ」を運営する一般社団法人ペイシェントフッド(東京)の発行。代表で自らも透析患者の宿野部武志さんが「情報端末を使わない患者もいる。ウェブ以外での発信が必要だ」と発案した。多くの患者から透析導入時の不安、誤解などの体験談を募集し、それらを基に製作した。集まった体験談の一部はじんラボのサイトでも公開中だ。
 冊子は「そろそろ透析です、と言われたら」「シャント作製と維持透析」「透析導入入院と日常生活」の3分冊。透析導入と決まってから実際に透析が始まるまでに必要な処置、生活の変化が順を追って学べるようになっている。
 医学的な監修に当たった深川雅史東海大教授(腎代謝内科学)は「患者が透析に至る経過は千差万別だ。症状がひどくなり緊急で透析に入る人もいれば、ほぼ無症状なのに透析導入になって拒否感を持つ人もいる」と話す。
 ▽人生の見直しを
 患者の話もそれを裏付ける。冊子製作に加わった埼玉県の鍼灸師の女性、ニックネーム「ハマー」さん(51)は「透析が嫌で嫌で半年も先延ばしにして、ひどい尿毒症になってしまった」という。書籍をむさぼり読んだが難しく、ネット情報は玉石混交で怖いものも。一層不安になった。「この冊子は当時の自分が必要としていたものです」と話す。
 1冊目で強調したのが「ライフスタイルの再編成」。透析によって全てを諦める必要はない。自分が大切にし、やりたいことと、続けられること、できないことを整理するメモ欄を設けた。「透析を人生の見直しの機会にしてほしい」と宿野部さんは言う。
 糖尿病合併症で透析に入った千葉県の会社員男性中田さん(44)は、実際に透析が人生の転機となった。「障害者雇用枠で再就職し、今では仕事も充実している。職場の多様性の象徴になりたい」と話す。
 東京都の無職男性すーさん(47)は通院時にいきなり「今日このまま入院して」と言われ、透析になった。最初の透析で足がふらついたことで一層、不安が募った。「透析病院で隣の人に教わったことが多かった。こんな冊子があれば良かったのに」と話した。
冊子の活用を勧める宿野部さん(右)と深川教授
冊子の活用を勧める宿野部さん(右)と深川教授

 


 ▽家族も読んで
 この冊子について深川さんは「まだ仕事をしている現役世代の患者には特に有用だ」と話す。利用できる社会保障制度など経済的な面も含めて、これからの社会生活、療養生活を整理して理解することに役立つ情報が載っているからだ。
 深川さんは「高齢化が進み、最近は透析に入る患者も高齢になっている。患者を支える家族や周囲の人たちも一読してほしい」とも指摘した。
 冊子入手の申し込みはじんラボのウェブサイトから。患者配布用の医療機関からの申し込みは5セット以上からで本体無料、送料手数料がかかる。個人の申し込みは送料込みで1セット千円。売り上げは次回の改訂のために積み立てる。(共同=由藤庸二郎)

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