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ゲーム依存回復のヒントは  信頼関係築く支援  専門家、当事者に聞く

2019.10.8 0:00
 ゲームをしたい衝動を抑えられず、日常生活よりゲームを優先させる日が長く続いて学業や仕事に重大な支障が出る状態は一種の依存症と捉えられるようになった。世界保健機関(WHO)も今年5月「ゲーム障害」を新たに疾病と認定した。苦しんでいる人の数など実態ははっきりしないが、先進的に回復支援に取り組む施設には相談が絶えないという。専門家や当事者の話から回復へのヒントを探った。
 ▽目立つ10代男性
かつてオンラインでプレーしたゲームの画面を見る大学院生。「ゲームをしたかったのは心が疲れていたから。今なら分かります」
かつてオンラインでプレーしたゲームの画面を見る大学院生。「ゲームをしたかったのは心が疲れていたから。今なら分かります」

 


 国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)は2011年から「インターネット依存専門外来」を開設している。18年度の新規患者計176人の約7割が10代の男性。個人やチームで対戦するオンラインゲームをやめられない人が最も多い。
 同センターでは診察、臨床心理士のカウンセリング、週に1回ゲームやスマートフォンから離れて日中を仲間と過ごすデイケアなどを組み合わせる。樋口進(ひぐち・すすむ)院長は「リアルな場で人との信頼関係を築ける環境を提供し、ゲームが人生の最優先ではないと気付いてもらうのが第一歩」と話す。
 ▽1日14時間
 かつてゲームに依存した東京都内在住の20代の男性は15年2月、初めて同センターを受診した。医師らと話し、デイケアに参加。バドミントンで体を動かし、参加者の昼食の輪に加わると気持ちがほっと和らいだ。
 依存が始まったのは1人暮らしをしていた大学2年の春。退屈な授業と目標のない毎日から逃れたくて、オンラインゲームのチームに加わると、生活が一変した。
 1日14時間ゲームをした。時間が惜しく、食事は1回、ラーメンとおにぎり2個。ゲーム中にネット電話で「すごいね」「やるじゃん」とたたえ合う時間は楽しかった。痩せていき、外出はほとんどしなくなった。3年生から休学。このままでは駄目だと分かっていたが「やめる理由を見つけられなかった」。
 治療に踏み出せたのは、心配した実家の母親が一度だけ会いに来たからだ。「好きなことをやっていい。だけど卒業だけはして」という言葉に背中を押され、母から聞いた久里浜医療センターを自分で予約した。
 初診の2カ月後に大学へ復学、その後大学院に進んだ。今は学業とボランティア活動で毎日が充実しており、ゲームは必要なくなった。ゲームをやめられず苦しんでいる人には「どんな生き方をしたいかを考え、勇気を出して助けを求めてほしい」と呼び掛ける。

 ▽背景に孤立感
 
 

 


 東京都荒川区の周愛(しゅうあい)荒川メンタルクリニック(花田照久(はなだ・てるひさ)院長)で、本人や家族の相談を受ける精神保健福祉士の八木真佐彦(やぎ・まさひこ)さんは「依存の原因は本人よりむしろ、家庭や学校など環境にあることが多い」と指摘する。
 相談に訪れるのは高学歴の親が多く、「子どもに良かれ」と受験へ過大なプレッシャーをかけ、塾や稽古事を幾つも掛け持ちさせている。
 「親の価値観に支配された生活の中で子どもは孤立感や自己否定感が強まり、ゲームをすることで、つらい状況を必死に生き延びている。そんな例が多いことを理解してほしい」と八木さんは話す。悪いこと、困ったこととされてしまいがちな不登校や引きこもりにも、そうした面があるという。
 八木さんが重視するのは、とにかく親の話をじっくり聞くこと。その中で「子どもがなぜゲーム依存になったのか」に思い至れば、親自身の言動が変わり、子どもも変わるという。「いわば親子の信頼関係を再構築するお手伝い。それが私たちの仕事です」(共同=山岡文子)

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