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ロープの合図で水中を捜索 米国の消防などが使う技術

2019.7.7 0:21 共同通信

 砂浜から海中に延びるロープを男性が引っ張り合図を送ると、フルフェースマスクに大小2本の空気タンクを背負った重装備のダイバーが1人、浮かび上がってきた―。

 濁って手元も見えないなど、厳しい環境の水中で安全に捜索活動ができるよう考えられた「パブリック・セーフティー・ダイビング(PSD)」と呼ばれる技術を学ぼうと、5月末、ダイビング指導団体のNAUI(ナウイ)が、静岡・伊豆で講習を開いた。

 米国の消防や警察組織などが採用する水中捜索の手法だ。

 「鵜(う)飼いみたいでしょ」と、講師を務めたNAUIの和泉芳則(いずみ・よしのり)さん(58)が笑顔を見せる。「テンダー」と呼ばれる地上要員が、ダイバーに付けたロープを引っ張る回数で合図を送り、「右に行け」、「浮上せよ」など水上から指示する。

 スキューバダイビングでは、安全のためダイバーが2人一組になって潜るが、PSDではメインと予備の空気タンク、呼吸器具を携行したダイバーが単独で潜水。もう一組のダイバーとテンダーが水上で待機し、合図があれば、ロープ伝いに救援に向かうシステムだ。

 訓練を受けたのは、東日本大震災被災地の海中などで行方不明者を発見してきた潜水捜索救難協会(さいたま市)の熟練ダイバー3人。
 ロープをたるませないようにしながら泳ぎ、折り返すたびにテンダーがロープの長さを短くすることで「一筆書き」で海底をなぞって捜索することができる。目隠しした状態で、全員が目標物の発見に成功した。

 救難協会の高野修(たかの・おさむ)さん(50)は「ロープ沿いに戻れば水から上がれるので1人でも安心感がある。コンパスで方角を確認する必要もなく捜索に集中できた」と手応えを感じていた。

 和泉さんは「水中を安全に効率よく捜索できる。日本の消防や警察の潜水士にもぜひ学んでほしい」と話す。

 昨年11月に北海道浦河町でPSDを体験した浦河消防署の佐藤揚義(さとう・あきよし)さん(44)は「単独潜水を認めてもらうことが課題」と、従来のルールを変える難しさを指摘する。NAUIでは他の指導団体とも垣根を越えて協力し、技術を広めることを目指すとしている。(写真と文 伊藤智昭、鷺沢伊織・共同通信写真映像記者)

※写真・記事の内容は2019年6月5日までの取材を基にしたものです。