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治療に特別な注意必要 糖尿病の人のがん  主治医同士の連携課題

2019.7.2 0:00
 

 がんは年齢とともに増える病気。このため、がんの診断を受けたとき、既に何らかの持病がある人は珍しくない。中でも、治療の際に特別な注意が必要で、患者数も多いのが糖尿病だ。安全ながん治療のために患者が知っておきたいことは何か。東京の国立がん研究センターで、全国でも珍しい「糖尿病腫瘍科」の責任者を務める大橋健医師の話を中心にまとめた。

 ▽見えてきた関係
 
 

                   糖尿病とがんは別々に起こる病気だが、大橋さんによると「両者の関係は意外に深いことが近年分かってきた」という。

 糖尿病患者の死亡原因にもそれは表れている。

 糖尿病になると、血液中の糖の濃度(血糖値)が高くなり、その作用で全身の血管が傷んでいく。1980年代までは患者の多くが、合併症である腎臓や心臓などの血管の障害が原因で亡くなっていた。しかし、合併症の管理の進歩を反映する形で、血管障害による死亡は年々減少。代わってがん死の割合が増えた。「死亡に至らない、がんの経験者はさらに多いはず」と大橋さん。
 
 
 また糖尿病の人はそうでない人に比べ、がんの発症リスクが高いことも欧米の研究で判明した。それを受け、日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会が2013年にまとめた報告によると、日本でも肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、大腸がんのリスクが高い。
 
 
 

 つまり糖尿病と言われたら、その治療だけでなくがんの予防や早期発見にも気を配りたい。大橋さんは「食事や運動の量は変わらないのに高い血糖値が続くような場合、膵臓がんなど何らかのがんが隠れている場合がある」として、念のため検査を、と勧めている。

 ▽薬で高血糖に
 
 本題の「がん発見後」では、大橋さんが「ぜひ知ってほしい」と言う注意点が二つある。
 
 一つは手術時のこと。血糖値が高いと傷が治りにくく、感染症などのリスクが高まる。このため、手術前から厳格な血糖値コントロールが必要で、普段は飲み薬で治療している人も手術前後はインスリン注射が必要になる場合がある。
 
 二つ目は、大半が外来(通院)で行われる抗がん剤治療に関わることだ。吐き気止めとしてよく使われるステロイド剤には血糖値を上げる作用がある。その高血糖により、喉の渇きや体のだるさを強く感じる人がいる。
 
 そうした不調を抗がん剤の副作用と思い込み、つらさのあまりがん治療を中断した患者がいた。しかし検査で高血糖のせいと分かり、インスリンで血糖値を下げたら体調が回復。無事抗がん剤を続けることができた。
 
 ▽患者の役割も
 
 別の例は60代の女性。乳がん手術の前に、数カ月にわたる抗がん剤治療を受けることになった。
大橋 健医師
       大橋 健医師

 

 インスリンの自己注射を学んでステロイドによる高血糖に対処する一方、抗がん剤の副作用の口内炎や味覚障害で食事が進まないときはインスリンを減量するなどして危険な低血糖を防いだ結果、女性は適正な血糖値で手術を受けられた。手術後は飲み薬に戻し、糖尿病の治療も続けている。

 大橋さんらが関わるのは国立がん研究センターの患者のみ。同じ病院内でがんと糖尿病の主治医同士が連携できるのが良い点だ。しかし一般には、がんを治療する医師と糖尿病の主治医が十分連絡を取り合ってケアに当たる例は「多くないのでは」という。そんなとき患者はどうすればいいか。
 
 大橋さんの助言はこうだ。がんの治療を受けることは糖尿病の主治医に必ず知らせる。抗がん剤治療中は糖尿病の通院間隔を普段より縮めるなどし、血糖値の変化に応じたきめ細かい治療を受けられるようにする。「食欲不振時に薬などをどう調節するかも事前に確認しておくと安心」という。
 
(共同通信 吉本明美)

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