こする、擦り込むは逆効果 皮膚科塗り薬の使い方 自己判断の中断は危険

アトピー性皮膚炎など長引く皮膚の病気では、軟こうなどの塗り薬が有効だ。ただ、適量を塗らなかったり、勝手に中断したりすれば十分な効果は見込めない。医師の指示を守って使うことが大切だ。専門家は「病院を受診して薬をもらうだけでは症状は改善しない。塗り方こそが大切です」と話す。使い方の基本を聞いた。

▽刺激で悪化
日野皮フ科医院(福岡県福津市)の日野亮介院長によると、塗り薬には多様な種類と役割がある。
皮膚の乾燥を防ぐ「保湿」、炎症を抑える「消炎」、細菌の繁殖を防ぐ「抗菌」、ニキビの治療薬には、毛穴の詰まりを改善する作用もある。
ほとんどの塗り薬の添付文書では、用法として「適量を塗布」するよう求めている。「布」は広く行きわたらせることだ。日野さんは「有効成分は塗っただけで毛穴や汗腺から十分に吸収される。多くの皮膚疾患は、患部を刺激しないことが大切。擦り込めという指示はしません」と強調する。
炎症箇所を刺激すればかえって症状が続いたり、悪化したりする。皮膚が赤く盛り上がり、ふけのようにはがれ落ちる尋常性乾癬(かんせん)では、擦り込む刺激をきっかけに新しい病変ができかねない。
▽十分な量を

では、どのように塗ったらいいのか。
まず、チューブから適量を指の腹に出す。日野さんによると、人さし指の第1関節から指先まで押し出すと、大人の手のひら2枚分の患部に塗る薬の目安になる。患部の広さに合わせて十分な量を使うことだ。不足すれば効果が限られる。
指に取った薬は、患部に点々と置いていく。こうすれば、少し塗り広げるだけで薬が行きわたる。その後、手のひら全体を使って優しく押さえるように塗り広げる。「ティッシュペーパーを当ててみて、ペーパーが落ちないぐらいが適量」だという。
塗り方と同時に、使う回数、期間を守ることも重要だ。
アトピーなどに使われ、炎症を抑えるステロイド剤の場合、大切なのはやめどき。自己判断での中断は危険だ。日野さんは「炎症は炭火のようなもの。赤みが消えても皮膚の下でまだ燃えている。皮膚が荒れているところと周囲の区別がなくなるぐらいまでしっかり使うことが大事。その後徐々に塗る間隔や量を減らしていきます」と話す。
▽成功体験
症状の改善がなかなか進まない時期にも諦めずに塗り続けるには、患者の理解と努力が必要だ。
東京逓信病院皮膚科の江藤隆史・客員部長によると、尋常性乾癬の患者に外用薬を処方した場合、決められた回数に対する実際の使用頻度は、4週目で67%、8週目には51%まで下がるという米国の研究結果がある。
適量を、きちんと塗れたかどうかを確かめるため、江藤さんは患者に使用後の空チューブを持ってくるように言うことがあるが、8割まで使う人は少なく、5割でも上々という。「背中など塗りにくい箇所もある。衣類に付くのも気になる。全ての患部に朝晩きちんと塗るのは大変です」と患者の気持ちを代弁する。
そこで江藤さんは、尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎のように患部が広い病気の場合、外から目立ち、患者がいちばん気にしている箇所をまず、塗り薬で徹底的に治すことを勧める。「一部でも患部がきれいになる成功体験が、ちゃんと塗る動機になる」という。
江藤さんは「皮膚からの吸収の仕組みを調べたり、べたつかない薬を開発したり、塗り薬も日々改良されている。正しい使い方で症状緩和につなげてほしい」と話した。
(共同通信 由藤庸二郎)