メニュー 閉じる メニュー

【編集後記】Vol.281

2019.4.26 11:04 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
東京都内で開催されたイベントで、指導者の在り方について語るエディー・ジョーンズさん
東京都内で開催されたイベントで、指導者の在り方について語るエディー・ジョーンズさん

 

 知人が主催するイベントで、ラグビーの日本代表前監督のエディー・ジョーンズさん(現イングランド代表ヘッドコーチ)の話を聞く機会があった。

 〝エディーさん〟が4年前のワールドカップ(W杯)で、優勝候補の南アフリカを破った日本代表を率いていたことは、スポーツファンならご存知だろう。

 

 名将が指導の基幹に据えるのは「規律とハードワーク」である。南ア戦の奇跡は、この二つを徹底した結果と言っていい。

 

 「選手にはまず、ルールに則ってプレーすることの大切さを教える。規律を守ることが、チームの利益にもつながる。さらに、選手が試合中に倫理的な葛藤に直面した場合、正しい判断ができるように日頃から彼らに伝える必要がある。スポーツはあくまで、健全な精神をもってプレーされなければならないからだ」

 

 昨年6月、スポーツライターの生島淳さんが共同通信に寄稿したインタビュー記事で、エディーさんはこう語っている。

 その1カ月前に起きた、日大アメリカンフットボール部の「危険な反則タックル問題」は、エディーさんの耳にも届いていて、あらためて指導者のあるべき姿を述べている。

 

 コーチは〝セールスマン〟であるとも言う。

 「大きな集団で運営されている競技では、全員が同じ考えになることはない。しかし、リーダーは同じ方向に向かせなければならない。選手たちにアイデアをセールスする必要があり、そのためには言葉を磨く努力が欠かせない。日本の指導者は、もっと言葉に対して敏感になるべきだ」

 

 ビジネス書を愛読するエディーさんは、「学生を教える場合、コーチと選手の年齢は年々離れていく。指導する側が情報のアップデートを怠らないことも、チームを円滑に運営するためには大切」と説く。

 

 ハードワークは監督、コーチに人間的魅力があってこそ、その強度を高めることが可能になり、チーム全体のレベルアップにつながる。

 

 「確かなものは覚え込んだものにはない、強いられたものにある」

 日本を代表する批評家・小林秀雄の教えは、適度な緊張感を維持した良好な師弟関係があって、初めて成立するのだと思う。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

最新記事