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【編集後記】Vol.279

2019.4.11 13:02 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
練習を見守る橋詰功監督(中央)=東京都世田谷区
練習を見守る橋詰功監督(中央)=東京都世田谷区

 

 「授業には必ず出席し、一番前の席で講義を聴く」「学業で決められた基準以上の成績を収める」「試合の日はネクタイを着用し正装で臨む」

 

 実話をもとにした映画「Coach Carter(コーチ・カーター)」は、母校の高校のバスケットボール部監督に就任した元スタープレーヤーが、選手と三つの〝契約〟を結び、実行できない場合は練習に参加させないという規則を定めるところからストーリーが展開していく。

 指導方針に反発しチームを去る生徒もいる中、残った選手にはハードワークを課す。

 厳しい規律を設けることで、負けてばかりだったチームは統率のとれた集団に生まれ変わり、州の選手権大会に進出する。

 

 「危険な反則タックル問題」で揺れた日大を昨年9月から指導している橋詰功監督は、新年度を迎え再生に向けてチームを一から作り直している。

 指導の中心には選手の自主性を据える。米国へのコーチ留学を経験している人だからかもしれない。

 

 従来の「上意下達」の体質からの脱却を目指す橋詰監督は言う。

 「学生自身が成長することが一番大事。物事を考えて意見を出すことで、プレーヤーとしても人間としても成長できるようになる」

 

 橋詰監督は立命大出身。名門チームの復活を託された「外様」の指導者は、OBの指導者より「結果」を求められる立場にある。

 しかし、あえて小手先の強化策を捨て根本から「フェニックス」を変えようとしているように見える。それは自身にとっても大きな冒険であるはずだ。

インタビューに答える橋詰功監督=東京都世田谷区
インタビューに答える橋詰功監督=東京都世田谷区

 

 「しばらくは体作り、勉強を重点的にやる方針。日本一練習していたチームが、今は日本一練習をしていない。学生は、本当に強いチームにできるか不安になっていると思う」

 本格的な実戦練習は4月の下旬から始めるという。

 

 「コーチ・カーター」に印象的なシーンがある。ケン・カーター監督役を演じる俳優サミュエル・L・ジャクソンは「オイラーズ」の面々を前にこう言うのだ。

 「自分で決断したことは自分で責任を取る。それは、人間が成長するために欠かせないプロセスなのだ」

 

 学生スポーツには、勝敗より大切なものがある。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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