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新時代の象徴が引退発表 ペイトリオッツのTEグロンコウスキー

2019.3.26 12:22 生沢 浩 いけざわ・ひろし
今年2月のスーパーボウルで、ラムズDBのタックルをかわして前進するペイトリオッツのTEグロンコウスキー(AP=共同)
今年2月のスーパーボウルで、ラムズDBのタックルをかわして前進するペイトリオッツのTEグロンコウスキー(AP=共同)

 

 NFLペイトリオッツのTEロブ・グロンコウスキーが、自身のインスタグラムで引退を発表した。輝かしいプロ選手としての経歴に終止符を打つ。

 「20歳の時にドラフト指名されて夢がかなってからすべてが始まった。今30歳を数カ月後に控え、これまでの人生でおそらく最大の決断をすることになった。今日をもってフットボールから引退する」とグロンコウスキーは投稿している。

 

 グロンコウスキーの引退は予測されていたことで、今年のスーパーボウルでも大きな話題の一つだった。

 自分の口からは「引退」の言葉は発しないものの、多くのフットボールメディアの論調では、リーグ制覇とともにフィールドを去るというものが既定路線だった。

 

 筆者も昨年と今年のスーパーボウルでグロンコウスキーを取材する機会があったが、長年にわたってハードヒットを受けてきた体は、あちこちから悲鳴をあげているようだった。首、腰、腕、膝に故障を抱え、足を引きずって歩く姿は痛々しかった。

 

 昨季はついにフィールド上でも体力の限界を感じさせるシーンがいくつか見られた。

 必然的にパスキャッチと獲得距離も減り、昨季は47回のレセプションで682ヤード、3TDという、およそグロンコウスキーらしくない成績に終わった。

 

 2010年のドラフト2巡の指名。スーパーボウルは3回制覇し、オールプロにも3回選出されている。

 もっとも、グロンコウスキーを語る際にこうした数字はあまり意味を持たない。彼こそが現代NFLにおけるTEの姿を確立した存在なのだ。

 

 グロンコウスキー以前のTEは、オフェンスの中で「バイプレーヤー」的な立場だった。

 ランプレーではブロッキングを担当するがOLほどのパワーはない。パス攻撃では密集地でもショート、ミドルパスを確実にキャッチして重宝されるが、派手なロングパスはWRの専売特許だった。

2018年のスーパーボウルでTDパスをキャッチするペイトリオッツのTEグロンコウスキー(AP=共同)
2018年のスーパーボウルでTDパスをキャッチするペイトリオッツのTEグロンコウスキー(AP=共同)

 

 ところがグロンコウスキーはQBトム・ブレイディのナンバーワンターゲットとしてオフェンススキームの核として活躍したのだ。

 ルーキーシーズンのTDパスキャッチは10。翌年は17である。TEとしては異例の多さだった。

 

 グロンコウスキーはTEでありながらWRのパスコースも走り、CBと「高さ」のミスマッチを生んでパスキャッチを量産した。

 パスオフェンスの中心となるという新しい価値をTEに植え付けたのがグロンコウスキーだった。

 

 もちろん彼の前にもアントニオ・ゲイツ(チャージャーズ)、トニー・ゴンザレス(チーフス、ファルコンズ)という名TEがいて、それぞれにパスオフェンスで重要な役割を果たした。

 ただ、グロンコウスキーとは決定的な違いがある。それはスーパーボウルに勝ったという事実だ。

 リーグ優勝チームのオフェンスの中心選手という肩書は、新時代のTEの象徴的存在という称号を認めさせるのに十分だった。

 

 現在のペイトリオッツの安定感のある強さを支えてきたのは、ビル・ベリチックHCとブレイディの存在だとよく言われる。

 それは間違いないが、グロンコウスキーなくして通算6度のスーパーボウル優勝はなしえなかったというのもまた事実ではないだろうか。

 

 明るく派手好きな性格でチームメートからも人気があった「グロンク」。

 フィジカルの強さとパスキャッチのうまさですべてのディフェンスが恐れた「TDマスター」。その勇姿をフィールド上で見ることはもうない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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