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第8部「ついのすみか」(5)神戸大大学院の平山洋介教授  持ち家一辺倒の転換を 

2019.4.5 16:04 森一徳

 高齢者の住宅の現状や課題について、神戸大大学院人間発達環境学研究科の平山洋介教授(61)に聞いた。

 ―日本の住宅政策の特徴は。

平山教授
      人口減と低成長で持ち家政策の根拠と条件が失われた

 「高度経済成長期に人口も所得も増加し、インフレで資産価値も高まる条件の下、政府は持ち家政策を推進した。中間層に家を建てさせ、経済を刺激する点に狙いの一つがあった。しかし、人口が減り始め、成長率が下がった現在、持ち家政策の根拠と条件は失われた」

 ―持ち家政策は何をもたらしたか。

 「65歳以上の高齢者が人口の28%を占める社会が何とか成り立っているのは、高齢世帯の約8割が住宅ローンを完済した持ち家に住み、住居費負担が軽いからだ。しかし、賃貸住宅に住む約2割は著しく不安定な状態にある。特に民間借家では家賃が高く、年金だけでは生活を維持できない。超高齢社会の在り方の検討では、年金水準だけでなく、住居費にもっと注目すべきだ」

 ―公営住宅の現状をどうみるか。

 「低所得者でも利用可能な公営住宅の戸数は全住宅の3・8%と異様に少ない。人口が減るので公営住宅は不要と言われるが、高齢の低所得者は大幅に増加している。1990年代末の派遣労働の規制緩和で急増した非正規労働者の多くは無年金で、あと15~20年ほどで高齢期に入る。持ち家一辺倒の政策を転換し、公営住宅の整備や低所得者向け家賃補助も含めたバランスのある対策が必要だ」

平山氏
住宅セーフティーネット制度は、ほとんど役に立っていない

 ―高齢者らの入居を拒まない賃貸物件の登録制度などを盛り込んだ新法が2017年10月に施行された。

 「今のところ、ほとんど役に立っていない。登録されるのは、市場競争力のない物件ばかりだ。困窮者対策というより空き家を抱える家主のための対策のようにも見える。予算規模も極めて小さい。少額の改修費補助だけでは、高齢者などに物件を貸すインセンティブにならない」

 ―都市郊外のニュータウンの問題点は。

 「戦後のニュータウン設計は若い核家族を対象とした。家族のプライバシーを重視した住宅・団地は、単身高齢者が増えると、彼らを孤立させる装置になってしまう。ニュータウンでは、住居の外に、住民同士が気楽に接触・交流できるスペースをつくっていくことが大事だ」
  ×  ×  ×
 ひらやま・ようすけ 1958年生まれ。神戸大で博士号取得。専門は住宅政策・都市計画。

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