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第8部「ついのすみか」(4) 福祉施設核に市街地再生  移住者招き、多世代交流 

2019.4.5 16:03 宮沢大志
 「よいしょ、よいしょ」。石川県・能登半島北西部にある輪島市の中心部で2019年1月中旬、餅つき大会が開かれ、大きな掛け声が響いた。地域の子どもやお年寄り、近くの福祉施設の利用者ら70人ほどが集まり、手伝いに来た近所の本田伸夫(75)は「子どもたちの笑顔を見られ、にぎやかでうれしい」と笑った。
 
石川県輪島市で開かれた餅つき大会
              石川県輪島市で開かれた餅つき大会

 輪島市は中心部に配置した高齢者や障害者の福祉施設を核に、多世代が交流するまちづくりを官民連携で進めており、餅つき大会もその一環で開催。07年の能登半島地震をきっかけに空き家増加や人口流出が加速した市街地の再生が目的で、市外から移住者を招く狙いもある。

 17年から18年にかけ、核となる6戸のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やデイサービス施設、障害者のグループホームを整備。地域住民も集えるよう、一帯に温泉や児童の自習室を備えた交流拠点、ジム、子育て支援施設もオープンさせた。いずれも空き家や空き地を活用しており、計約60人の雇用を生んだ。
 
 社会福祉法人や青年団体で構成し、各施設を運営する「輪島カブーレ」のマネジャー原正義(41)は「高齢者が障害者や子どもと触れ合うことで生きがいを感じてくれる。さまざまな年齢、立場の人が共生することで良い化学反応が起きている」と話す。
 
サ高住のリビングで歓談する高齢者
サ高住のリビングで歓談する高齢者

 地元商工会議所は高齢者らの移動の足を確保し街ににぎわいを生み出そうと、低床で乗り降りしやすい小型電動車両を定時運行。病院やバスターミナル、朝市会場などを無料で結び、観光客にも利用されている。

 サ高住に入居した川畑佳樹(78)は、妻美江(77)と金沢市から移り住んだ。美江は交流拠点のそば店で週3日働き、佳樹は頻繁に温泉に通う。2人は「街中の生活は便利で、都会に比べ家賃もお手ごろ。ここがついのすみかです」と声をそろえる。
 
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、現在約2万7千人の輪島市の人口は、25年に約2万1千人、45年には約1万2千人に減るとされ、市は移住促進に活路を求めている。
 
 ただサ高住の他の入居者はいずれも市内からの転居。市は戸数を増やし市外から中高年層を呼び込みたい考えだが、自治体間の移住者獲得競争が過熱する中、思惑通り進むかは未知数だ。
 
 市企画課計画調整係長の村元大祐(37)は「移住者を孤立させず、地域で受け入れる土台はできつつある。住みやすさをPRし、首都圏などからも移住先に選んでもらえるまちづくりを進めたい」と意気込む。(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

 

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