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第8部「ついのすみか」(1) 憧れ一転、孤立に危機感 半世紀のニュータウン 

2019.4.5 16:00 佐藤弘樹
 愛知県北部の丘陵地帯に約2万2千戸の集合住宅や一戸建てなどが整然と立ち並ぶ春日井市の高蔵寺ニュータウン。高度経済成長期の街開きから半世紀がたち、大型スーパーがある中心部から延びる坂道では、夕暮れ時には買い物帰りのお年寄りの姿が目立った。
 
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン

「自宅からスーパーまで歩いて10分以上かかり、坂道ばかりで一苦労。仕方なくタクシーを呼ぶこともある」。野菜や刺し身などが入ったレジ袋を抱え、家路を急ぐ女性(71)はため息をついた。

 高蔵寺ニュータウンは地方から名古屋圏に流入した働き手の住宅需要に応えるため、日本住宅公団(現都市再生機構)が整備した。1968年に入居が始まり、東京・多摩、大阪・千里と並び日本三大ニュータウンの一つに数えられる。
 
 最寄りの高蔵寺駅から名古屋駅までJRで約30分と利便性も高く、市ニュータウン創生課長の水野真一(50)は「自然環境も豊かな『憧れの住まい』を求め、多くの団塊世代のファミリー層が移り住んだ」と話す。
 
 ニュータウンで50年余り暮らす元会社員の西川敏夫(78)は「移り住んだ当時は入居希望者が多く、ここでの生活はステータスだった。外で走り回って遊ぶ子どもたちで地域に活気もあふれていた」と振り返る。
 
街開きから半世紀がたった
                  街開きから半世紀がたった

 しかし、90年代には進学や就職を機に街を離れる団塊世代の子どもたちが増え始め、ニュータウンの人口は95年の約5万2千人をピークに減少傾向が続いている。

 入居者の高齢化も進み、65歳以上の割合は昨年4月時点で34・0%で、市平均の25・3%を大幅に上回った。水野は「買い物や通院が困難で外出を控える高齢者が増え、地域で孤立する懸念が強い。全国のニュータウンに共通する課題だ」と指摘する。
 
 初期に建てられた集合住宅は5階建てでもエレベーターがないなど設計が古く、4、5階の空き家率が25%を超える棟もある。西川は「近所では子ども会が成り立たないぐらい子どもが減り、単身の高齢者が増えた。町内会の清掃活動に顔を出すのもお年寄りばかり」と諦め顔だ。
 
 危機感を強めた市は、小学校の廃校舎を活用し、図書館やカフェなどが入った交流施設を整備。2018年4月の開館以来、多くの高齢者や親子連れでにぎわっている。施設を運営するまちづくり会社の営業企画部長石川勇三(61)は「閉じこもりがちの高齢者が外出する呼び水になればいい」と話した。(敬称略、年齢・肩書は取材当時)
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 団塊の世代が全員75歳以上になる2025年、高齢者のすまいはどうなるのか。各地の動きを追った。
 
 
グラフ
 

 日本の住宅政策 1950年代以降の高度経済成長期に、農村から流出した人口が東京など大都市圏に集中し、住宅不足が深刻化した。地方自治体などは急増する住民の住まいを確保するため、60~70年代を中心に都市郊外のニュータウンを開発。国は、住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)や銀行などの住宅ローン融資を通じて物件購入を後押しした。住宅総数は73年の約3千万戸から2013年には約6千万戸に倍増した。一方、住宅の供給過剰と人口減少を背景に空き家は近年増加しており、総住宅数に占める割合は13年時点で13・5%に上る。低所得層の受け皿となる公営住宅は、財政難で新規に建設する自治体は少ない。14年度の管理戸数は216万戸で、過去10年間はほぼ横ばいとなっている。

 

 

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