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第7部「認知症、次の一歩」(6)国立長寿医療研究センターの柳澤勝彦研究所長  社会で患者守る仕組みを

2019.3.22 16:05 共同通信
 認知症を巡る課題や展望について、国立長寿医療研究センターの柳澤勝彦研究所長(64)に聞いた。
 
 ―認知症の患者は今後も増えそうだ。
 
 「2025年、団塊の世代が全て75歳になる。認知症の中で最も多いアルツハイマー病は75歳以上で発症しやすいため、急激に患者が増える可能性がある」
 
 ―治療薬開発の現状は。
 
 「製薬企業は、アルツハイマー病の進行を止める新しい薬の実現を目指して10年以上努力してきたが、残念ながらことごとく失敗している。現在残っているのは、わずかな候補薬のみだ。25年には間に合わないかもしれない」
 
 ―手だてはないのか。
 
 「最近の研究で、発症する20~30年前から脳の中に原因物質のアミロイドベータというタンパク質が蓄積し、脳の神経細胞を壊し始めることが分かってきた。今は治療を始めるのは発症後だが、早い段階から薬を使えば効果が上がるとの期待が出ている」
 
柳澤勝彦氏
       患者を社会で守る仕組みを作らなければならない

 ―どうやって発症前に治療が必要な患者を探すのか。

 「脳脊髄液を取るなどの方法があるが、患者の体にかかる負担が大きい。われわれは微量の血液からアミロイドベータの蓄積を見極める方法を開発した。健康診断で血中のコレステロールを調べるようにアミロイドベータも調べ、異常があれば薬を投与して発症を防ぐという治療法の確立を目指している」
 
 ―予防は。
 
 「運動して、良質の睡眠や食事を取り、いろいろなことに興味を持って人と関わる生活が、認知症の予防につながるということが、科学的にも示されつつある。取り組みを推進すれば患者を減らせるかもしれない。ただ日本人の睡眠時間は短くなっていると聞く。予防の観点からは心配だ」
 
 ―制度面の課題は。
 
 「このセンターがある愛知県大府市では以前、認知症患者が電車にはねられ死亡する事故が発生し、鉄道会社が家族に損害賠償を請求したため、大きな議論になった。今後こういうことが起きる可能性は高くなる。患者を社会で守る仕組みを作らなければならない。一人歩きのお年寄りに話し掛けたり、情報機器を活用したりするなどさまざまな方法がある。高齢化社会のトップを走る日本が新しいシステムや産業の育成に成功したら、海外にも輸出できるだろう」
   ×   ×   ×
 やなぎさわ・かつひこ 1954年生まれ。新潟大医学部卒。米国立衛生研究所研究員などを経て2015年から現職。東京都出身。

 

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