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第7部「認知症、次の一歩」(5) 住居デザイン過ごしやすく  色分け工夫、難聴に着目も 

2019.3.22 16:04 共同通信
 トイレのドアはくっきりとした黄色。分かりやすい便器のマークも表示されている。通路の壁と床は違う色で、浴室の手すりは真っ赤。
 
トイレマークの表示や色使いなど認知症に優しいデザインを取り入れた介護施設(東京都世田谷区)
トイレマークの表示や色使いなど認知症に優しいデザインを取り入れた介護施設(東京都世田谷区)

 「全ては認知症の人が過ごしやすくするための工夫です」。東京都世田谷区の介護施設を所長の片山智栄(42)が案内してくれた。通いや宿泊、訪問看護など複数の機能を組み合わせた施設で、十数人が利用。ほとんどの人に認知症がある。

 「認知症の人は『ここを持って』『手すりを持って』では分からないことがある。『赤い所を持って』と言えば、自分で手を伸ばしてつかめる。残された能力を生かし、尊厳も保てる」と片山。
 
 
浴室の手すりは目立つように赤色
浴室の手すりは目立つように赤色

 認知症になると、空間的な位置関係が分かりにくくなる「視空間認知障害」を生じがちだ。「白色系で統一された一般的な浴室では、距離感がつかめなかったり、浴槽を区別できなかったりして転倒しやすい」と言う。

 「いろんな色合いが使われていて、快適よ」と利用者の本田節子(83)=仮名=。本田を含め多くの利用者は、職員が誘導しなくてもトイレに自分で行ける。施設外に迷い出て行くこともない。職員の負担も軽くなり、片山はデザインの効果を実感している。
 
 施設の設計は、英スターリング大の専門機関が定めた「認知症に優しいデザイン」に基づく。これを、まちづくりに生かそうとしているのが福岡市。2020年3月までにガイドラインを定め、市内の介護施設や住宅に普及させたい考えだ。
 
 世田谷の施設や福岡市を支援する医療・介護コンサルタント会社「メディヴァ」(東京)の社長、大石佳能子(57)は「認知症は薬で解決するのではなく、環境や社会を整えようという考え方が世界の潮流」と話す。
 
難聴者向け対話スピーカーを使って会話訓練をする理学療法士(ユニバーサル・サウンドデザイン提供)
難聴者向け対話スピーカーを使って会話訓練をする理学療法士(ユニバーサル・サウンドデザイン提供)

 視覚に訴える試みだけでなく、聴覚に着目した研究開発も進む。難聴が原因で人との会話が難しくなり、認知症が悪化するケースがあるからだ。

 「ユニバーサル・サウンドデザイン」(東京)は、難聴者向け対話支援スピーカー「comuoon(コミューン)」を製作。あらゆる音や周波が強調される補聴器と異なり、人の声を拾い上げ、クリアに聞こえるのが特徴だ。サイズは握りこぶし大。医療機関や金融機関など4200カ所以上で導入されている。
 
 
 開発者で社長の中石真一路(46)は「『聞こえやすい』社会づくりを通じ、認知症の進行を防ぐ取り組みに貢献したい」と意気込む。
 
 デザインや技術を工夫し、認知症とともに生きる時代へ。次の一歩が始まっている。(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

 

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