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「行為責任」厳格に 核心評論「裁判員裁判の量刑」

共同通信編集委員 竹田昌弘

 川崎の中1男子殺害事件と宮崎の女性殺害事件でそれぞれ主犯格とされた被告には、対照的な判決が宣告された。2事件を通して裁判員裁判の量刑を検証してみたい。

 司法研修所の教材によれば、量刑は犯罪行為にふさわしい刑事責任を明らかにすることで「行為責任主義」と呼ばれる。

 具体的には、動機や態様、結果などが類似する事件の刑を参考にして客観的な重さ(特に結果の重大さ)とその罪を犯した被告はどの程度非難されるべきかを検討し、犯罪行為にふさわしい刑の枠を定める。そして反省の程度など、犯罪行為以外の要素を必要ならば考慮して刑を決める。

 検察側も行為責任主義で求刑し、裁判官裁判の判決は求刑の「7~8掛け」とされてきた。

 しかし裁判員裁判は重い判決も多く、殺人など8罪で比べると、裁判員裁判(2009年5月~14年5月)で求刑を上回った割合(1%)は、裁判官裁判(08年4月~14年5月、0・1%)の10倍に上った(最高裁集計による)。

 最高裁は14年7月の判決で、女児虐待死事件の裁判員裁判で求刑の1・5倍に当たる懲役15年を宣告された両親の刑を軽くし「裁判員裁判といえども、他の裁判との公平性が保持された適正なものでなければならない」と指摘。量刑の傾向を前提としない場合は、その事情を「具体的、説得的に」明らかにすべきだという基準を示した。

 その後、求刑を上回る判決は少なくなり、少年被告の不定期刑上限となる懲役10年以上15年以下を求刑された川崎事件の主犯格は、懲役9年以上13年以下とされた。

 横浜地裁は2月10日の判決で「犯罪行為は相当に重い部類だが、突発的な犯行で殺意形成に未熟さが影響していることからすると、上限に位置するとまではいえない」とし、反省の態度は量刑を左右しないと判断した。

 一方、宮崎事件の主犯格には、懲役25年の求刑に対し、無期懲役が宣告された。14年7月の最高裁判決後、最も求刑を上回った刑とみられる。

 2月29日の判決によると、宮崎地裁は「犯罪行為は非人間的で常軌を逸し(類似事件の)量刑傾向を把握するのは容易でない。求刑は市民の感覚や良識に照らして軽すぎる」などとして懲役30年に近い刑から無期懲役という枠を定め、不合理な弁解や反省の態度がないこと、遺族の処罰感情などから無期を選択した。

 求刑を超える刑は否定しないものの、無期懲役は仮釈放されなければ終身服役する。法務省によると、14年までの10年間に仮釈放された人の約3倍の150人余りが獄死した。裁判員はそこまで重い刑であることを理解していたのだろうか。

 そもそも刑の選択は、犯罪行為以外の要素を重視しすぎていないだろうか。犯罪者とはいえ、行為責任主義が厳格に適用され、公平な刑に処されるべきだ。

 (2016年3月31日配信)

名前 :竹田昌弘

肩書き:共同通信編集委員

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