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視標「東京五輪まで3年」

水泳五輪金メダリスト 北島康介

 2020年東京五輪で日本がどんな姿を見せられるのかが気になる。1964年の五輪は国民に勇気や生きる力を与えたと言われるが、実際にどうだったかは私には分からない。

 過去と現在ではかなり状況は違う。日本は先進国になった。昔は、子どもたちは外を駆け回って体を動かし、遊ぶことが日常的だった。今はスポーツをしない子どもも多い。娯楽が進んでパソコンやゲームがあり、体を動かさなくても十分満足できるようになった。

 東京五輪は、果たして子どもたちに感動を与えられるのか、が大きなテーマになる。本当に素晴らしいものだということを、選手はプレーを通じて訴えなければならない。見た人も感動を伝えてほしいし、運営に携わる人にも考えてほしい。

 私は92年バルセロナ五輪で、岩崎恭子さんが女子200メートル平泳ぎの金メダルを取ったのを見て、五輪選手になりたいと思った。東京五輪でもスポーツ熱が高まって、子どもたちがいろんなスポーツに取り組むきっかけになってほしい。

 今、準備では多額の開催費用に対して国民の反発がある。それは、五輪の「リアル」が分からないから否定的になっているのかな、と感じる。

 大会では勝って当たり前、という選手は一人もいない。勝つか、負けるかが本当の勝負。それがスポーツであり、4年に1度、最高の舞台での勝負が五輪のリアル。そのすごさ、それが与える感動、それを見た時にどんな衝撃を受けるか。今はそれが見えないから、反発が出るのだと思う。

 最後は、大会で選手が良い結果を残して、見る人が感動してくれれば報われる。運営への批判があっても、選手の活躍が大会を救ってくれるのではないか。

 そういう点も含めて、五輪は選手の祭典であってほしい。いろんな利害関係は抜きにして、世界一の大会だから、選手には能力やパフォーマンスの高さを発揮してほしいし、観客には人間の感性や進化を見てほしい。

 一番望むことは、日本の選手が良い結果を残せる大会にすべきだということだ。それが、本当の意味で自国開催のメリットだと思う。どの国の選手も決められた場所、食事、環境でやるしかない。だから、日本の選手が心地よく生活して、ストレスを感じないでパフォーマンスできるように支援してほしい。

 国民が納得できる結果を出すことも大事だ。大会が終わったとき、「皆さんがサポートしてくれたから良い結果が出ました」と話す選手が一人でも多く出てくることが成功だと思う。

 選手として自国の五輪に出場できることは、すごくうらやましい。ただ、私がもし全盛期に東京五輪に出て「金メダルを狙う」という状況だったら、どんなに大きなプレッシャーがかかるだろうか。どう向き合うべきか、考えたくはない。

 だから、東京五輪を目指す選手はそれだけで尊敬する。本番までもう3年しかない。選手には、今日の練習では何が良くて、何が悪かったか、過程を振り返ることを大事にしなさいとアドバイスしている。今が良ければいい、という姿勢では五輪の重圧には耐えられない。本番で自分がどうなっていたいかを考えて、逆算した上で準備し、自己実現してほしい。(談)

  (2017年7月19日配信)

北島康介

名前 :北島康介

肩書き:水泳五輪金メダリスト

プロフィール: きたじま・こうすけ 1982年生まれ。競泳男子平泳ぎで2004年アテネ五輪から2大会連続2冠。16年に現役引退。

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