古都の良さ学んで伝える 地道な活動に共感広がる 「京すずめ文化観光研究所」(京都市、第1回優秀賞)

2018年12月18日
共同通信共同通信

 京都・嵐山。渡月橋周辺のにぎわいを背にして、しばらく歩いて行くと、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された嵯峨鳥居本地区が広がる。室町時代から集落として開かれたとされ、近くの愛宕神社の門前町として栄えた。道の両側には町屋風の建物が並び、静かな空気の中に穏やかな時間が流れている。
 一角にある平野屋。かやぶき屋根が目を引く料亭で、2018年12月の日曜日、「京すずめ文化観光研究所」が呼びかけた「おくどさんサミット」が開かれた。「おくどさん」とは京都の言葉で、煮炊きなどに使うかまどのこと。失われつつあるかまどを見直し、人と火の関わりや食事、暮らしを考えようとの提案に、研究者や建築などの関係者が集まり、門川大作・京都市長もあいさつに立った。

 今も現役で使われているかまどから上がる湯気と炎に感嘆の声が=2018年12月、京都市
 今も現役で使われているかまどから上がる湯気と炎に感嘆の声が=2018年12月、京都市

 

 参加者は、約400年続く平野屋で今も使っているかまどを見学。ガスと違って火加減が難しく、日によって燃え方も変わるという説明に聞き入り、長年のすすで黒くなった天井を見上げた。和室に移っての報告会では「実家の古いかまどを残していく方法は」「火を入れ使ってみたいが、建物の保存との兼ね合いが難しい」といった話が飛び交い、外の寒気を吹き飛ばす熱気に包まれた。

 「おくどさんサミット」では熱心な意見交換が続いた=2018年12月、京都市
 「おくどさんサミット」では熱心な意見交換が続いた=2018年12月、京都市

 


 ▽恋文、映画と活動広がる

 ユニークな活動の原動力を、土居好江理事長は「京都愛」と笑う。大学時代から暮らしにまつわる文化を研究してきた。身近な題材を手がかりに、古里・京都の魅力を伝えていこうと、学者や主婦、学生らと2001年に「遊悠舎京すずめ」を設立。水や土などをテーマに、農家や企業、寺社などを訪ねて歴史や自然を学ぶ講座を開いてきた。
 10周年を迎えた10年には、京都への思いをつづってもらう「京都への恋文」を公募。俳句や川柳、絵手紙など約860点の作品が集まった。京都を舞台にした川端康成の小説「古都」の映画化にも携わるなど、活動の幅は広がってきた。

 ▽一般社団法人に衣替え、新スタート

 こうした実績を重ね、取り組みの体制を整えようと、17年にはNPO法人から一般社団法人にし「京すずめ文化観光研究所」と名称を変え、新たなスタートを切った。
 日本を訪れる外国人旅行者は18年に初めて3000万人を突破。旅行者が集中するゴールデンルートの一つとなった京都市は、一年を通じてさまざまな国の人でにぎわう。こうしたブームともいえる状況だからこそ、地域の宝をじっくりと見つめ直そうという取り組みは存在感を増している。

 土居好江理事長(左端)ら「京すずめ文化観光研究所」のメンバー=2018年12月、京都市
 土居好江理事長(左端)ら「京すずめ文化観光研究所」のメンバー=2018年12月、京都市

 

 「形を残すだけではなく心を残したい」と、土居さんは話す。かまどに目を向けた活動も、その一つだ。19年度には報告書をまとめる計画で、古都の奥深い魅力を伝える取り組みは続いている。(共同通信 伊藤祐三)

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