【1156】金滴 吟風 純米吟醸 無ろ過生原酒(きんてき、ぎんぷう)【北海道】

例によって例のごとく、晩酌のため、歩いて近くのH居酒屋へ。以前、店の冷蔵庫に「金滴 吟風 純米吟醸 無ろ過生原酒」が入っているのを目ざとくチェックしておいたので、これを飲むのが目的だ。
酒蛙「北海道は、力強い辛口タッチの酒が多いが、これは?」
店主「それがね…。甘いんですよ
酒蛙「へ~、珍しいね」
飲む前に、こんな会話をしながらいただいてみる。
店主「甘いっすね。すっきりしたタッチだが、味が出ている」
酒蛙「含み香は、吟醸香がふわっと広がる。やわらかい。甘みと旨みがくる。余韻は辛み」
店主「酸はあまり感じない」
酒蛙「酸は中盤から少しくる。『甘めだけど、すっきりした飲み口』という酒は、なかなか無いなあ。酒の特質上、甘いとコクがあり、辛いとすっきりという傾向になりがちだから。これは希少価値かも。」
店主「甘さが、口の中に残る感じです」
酒蛙「いや、俺は違うとおもう。キレが良いよ。余韻の最後の最後が苦みだ。甘めで、まとまりのいい酒だよ」
店主が「醸造元がある新十津川町ってどこ?」と聞くので、iPod Touchで調べる。わたくしも知らなかった。検索し、地図上の町の位置を知り、2人とも「なるほど」。なにが「なるほど」なのかは不明だが…。
次に、ぬる燗をつけていただいてみる。
酒蛙「わっ! 辛いっ!」
店主「おおっ、燗が旨い。これは旨い。冷酒より旨い」
酒蛙「なんで、こんなに辛くなるんだ? 旨みは驚くほど厚みが出る」(ちなみに酒度は+1。甘口に属する数値だ)
店主「上顎に酸がちょっと残る。濃いなあ」
酒蛙「燗にしたら、ずいぶん力強くなった。こんなに劇的に変わるとは!」
店主「うん、力強い。甘みもある」
酒蛙「冷酒と燗酒とでこんなにも顔が変わる酒も珍しい。余韻は苦み」
店主「はい、冷酒と燗酒とでは全然違いますね」
酒蛙「これは、これは。本当に驚いた」
店主「この酒はいい。ずいぶん味がふくらみます」
酒蛙「冷酒のときはすっきりした酒質が、ぬる燗で濃醇になるとは! ああ驚いた」
2人も、飲み終わってからも、ひとしきり「金滴」の話題でもちきりだった。それほど印象的な燗酒だった。冷酒はどちらかといえば目立たないタッチだったので、そのドラスチックな変わりようはまさにジキルとハイド的だ。
瓶の裏ラベルは、この酒を「地元新十津川町産の酒造好適米『吟風』を使用し、手洗いによる限定吸水、麹蓋による麹造りと、昔ながらの丁寧んば手作りの技法にこだわり造りました」と紹介している。また、蔵のホームページはこの酒を「地元新十津川産の酒造好適米『吟風』を使用し、香り高く味わい豊かな純米吟醸酒に仕上ました。 無ろ過生原酒ならではのしっかりとした味わいをお楽しみ下さい」と紹介している。
原料米は、新十津川産酒造好適米吟風100%使用。新十津川産とは、もしかして稲作地としては日本最北に近いのではないだろうか…??? 「吟風」は、北海道立中央農業試験場が1990年、母「八反錦と上育404号の子」と父「きらら397」を交配、選抜と育成を繰り返し開発。2002年に品種登録された。北海道で栽培されている。この酒の精米歩合は50%。
このあと、わたくしは「日下無双 純米 生酒」(当連載【1016】参照)をいただいた。