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【1334】喜久酔 特別本醸造(きくよい)【静岡】

2013.11.3 12:45
静岡県藤枝市 青島酒造
静岡県藤枝市 青島酒造

 静岡県島田市に住む友人が、わたくしをたずねてきた。10年以上前、彼は本州の背骨(脊梁)を単独で歩くことを計画。わたくしは当地の登山ルートを彼に教えたり、時には一緒に歩いて案内したり、時には車で送り迎えをするなどサポートした。

 その縁で彼は時々、わたくしをたずねてくる。そして、酒を飲みながら旧交を温め合っている。今回は奥さま同伴で来た。当地の山を登り、下山後、当地をおとずれた。ホテルに迎えに行き合流即、居酒屋に直行だ。午後6時から11時ごろまで飲んでしまった。

 そのとき、彼からお土産にいただいたのが「喜久酔 特別本醸造」だった。「喜久酔」はこれまで、何種類か飲んだことがあるが、中でも「喜久酔 しぼりたて 普通酒 無濾過生原酒」(当連載【425】参照)が、強く印象に残っている。普通酒とはとうていおもえない、タダナラヌ旨さの酒だったからだ。さて、これはどうか。彼は「燗酒にすれば旨い、と評判のお酒です」。数日後、晩酌酒としていただいてみた。

 部屋にそのまま置いていたら、室温19.6℃。すなわち常温として飲みごろ温度になっていた。甘みと旨みがあり、酸味がやや強い、が第一印象。若干、甘旨酸っぱさを感じる。とろり感があり、やわらかなめらかふくよかタッチで、厚みがけっこうあるが、キレが良い。穏やかで適度な香り。余韻をあまり残さず、すっとキレる。上品でクセがなく、飲み飽きしない酒質なので、晩酌スタンダード酒に、かなり適している。飲み進めていくと、甘みが強く出てくる。わたくし個人的には、甘みがすこし抑えられれば、さらにいいとおもった。

 次に燗酒にしてみる。レンジでチンしたら42.6℃。ぬる燗より心持ち高めの温度。いただいてみる。軽快感が出てきて、酸や苦味が出てくる。甘みが引っ込む。甘みの代わりに苦みが出てくるイメージだ。しっかりした、やや強い味わい。これは旨い。強い味わいではあるが、やわらかさもある。彼が言うように、たしかに燗酒の方がいい。個人的には、甘さが引っ込むぶん、燗酒が良い、と感じた。温度が下がってくると、酸がさらに強くなる。これはいい、これはいい。さらに温度が下がってくると、甘みも再び顔を出してくる。

 いやはや驚いた。前述したが、「喜久酔 しぼりたて 普通酒 無濾過生原酒」でぶっ飛んだのに続いて、今回の「喜久酔 特別本醸造」でもぶっ飛んだ。冷酒良し、常温良し、ぬる燗はさらに良し。ウルトラスーパー本醸造ではないか! 本醸造ファンのわたくし(ちなみに、わたくしの家飲み晩酌酒は、もう何年も「土佐鶴 本醸造辛口」一本)としては、「喜久酔」のように下位クラスの普通酒や本醸造が優れているのは、なんともいえずうれしい。

 ラベルには「原材料名 米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール、精米歩合60%」としか表示されておらず、使用米の品種が非開示なのは残念。せっかく、いい酒なのに、惜しい。

 あとで知ったことだが、この「喜久酔 特別本醸造」は、食の雑誌「dancyu」(2003年3月号)で、「毎日でも飲みたい酒」で第1位に輝いた、という。また、食のマンガ「美味しんぼ」(ビッグコミック・スピリッツ)にも取り上げられた、という。「喜久酔 特別本醸造」を飲んでみて、これらの“栄誉”も納得の酒質だとおもった。