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第2部「介護保険はどこへ」(3)軽度者サービス縮小の波 報酬減で大手が撤退

2018.11.20 11:02 市川亨
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 介護保険で7段階ある要介護度のうち、最も軽い要支援1と2の人向けの訪問・通所サービスは2017年度までに介護保険から市区町村の「総合事業」に移された。費用抑制が目的の一つで、事業者への報酬が引き下げられたため、大手事業者を中心に軽度者向けサービスから撤退する動きが各地に広がっている。

 宮城県岩沼市郊外。1人暮らしで100歳の小畑きよ子にとって、週1回訪れる高田洋子(68)は自宅での生活を続ける上で大切な存在だ。脚が悪く要支援1と判定されており、長距離は歩けない。高田にメモを渡してスーパーへ買い物に行ってもらう。「この人が来てくれるから長生きできてるのよ」とほほ笑む。

 小畑の生活には18年1月、変化があった。約7年間利用していた大手事業者が軽度者向け訪問介護から手を引いたため、高田がスタッフとして登録するみやぎ生協(本部・仙台市)に利用先が切り替わったのだ。

 スタッフが専門職ではない分、岩沼市から生協に支払われる報酬は従来の介護保険サービスの約7割。利用者負担もその分安くなり、小畑にとってはありがたいが、生協の事業収支は赤字。他の事業部門で補いながら続けているのが実情だ。

小畑きよ子(右)は週1回、生協のスタッフ高田洋子に財布やメモを渡して買い物を頼む
小畑きよ子(右)は週1回、生協のスタッフ高田洋子に財布やメモを渡して買い物を頼む

 みやぎ生協事務局の須藤敏子(66)は、元気に暮らす小畑の姿にやりがいを感じながらも、総合事業の在り方には疑問を感じざるを得ない。「『誰かがやらないと』という思いでやっているが、持続可能な仕組みと言えるのか。制度の改悪としか思えない」

 総合事業への移行に伴い、訪問介護を利用できる時間が少なくなり、不満を漏らす高齢者もいるという。加えて、なじみのヘルパーとの人間関係が切れることは生活の質に影響する場合がある。

 従来の事業者が総合事業から撤退の意向を示した例は、厚生労働省の調査で全国の約4割に当たる676自治体であった。須藤は「総合事業に移されたことで自治体間の格差が大きくなった。住んでいる場所によってサービス水準が大きく違っていいのか」と訴える。

 ただ、団塊の世代が75歳以上になる25年以降も介護保険制度を維持しようとすれば、サービス給付の抑制は避けられないのも事実。財務省は要介護1、2が対象のサービスも市区町村に移すよう主張している。

 要介護1、2で訪問・通所介護を利用する人は、要支援の1・3倍に当たる約139万人。当然ながら状態はより重く、影響は質、量ともにこれまでの比ではない。

(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

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