メニュー 閉じる

47NEWS

第2部「介護保険はどこへ」(1)「家にいたい」願い危うく 自費ヘルパー頼る人も

2018.11.20 11:00 千葉響子、市川亨
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
食事の介助をするホームヘルパー(手前)と生活援助サービスを利用する橋本正臣
食事の介助をするホームヘルパー(手前)と生活援助サービスを利用する橋本正臣

 愛知県北部の山間地。築100年を超す木造平屋建てに橋本正臣(87)は1人で暮らす。ずっと独身だ。筋力が衰え自力で移動できず、ベッド周辺には日用品が積み重ねられている。調理と食事の介助や、排尿を促す導尿用カテーテルの小まめな点検が欠かせない。

 「家族や地域と隔絶された橋本さんにとっては、自宅を訪れるヘルパーや看護師が唯一のよりどころ」とヘルパーの神谷洋美(56)は話す。

 重い要介護状態でも、誰かの見守りを受け、自宅生活を送る高齢者は珍しくない。頼りになるのが、家事を助けてくれる介護保険の訪問ヘルパーだ。その「生活援助サービス」に給付抑制の波が押し寄せている。
 
 「家政婦代わりに使われている」との批判が高まり、政府は2018年10月からサービス回数に基準を設けた。要介護3と状態が重い橋本の場合、これまでは1日に2回、月60回程度利用してきたが、基準に当てはめると月43回に減る。

 しかしヘルパーは単なる家事の補助者ではない。よく眠れているか。便秘していないか。食事の支度や洗濯の合間の何げない会話から体調の変化を聞き出していく。「サービスの提供により、改善すべき点を明確にし、次の支援につなげるのが目的」と神谷は言う。自宅で暮らし続けたいと願う橋本は「サービスを減らされたら生きていけない」と訴える。

 保険外で全額自費のサービスに頼る人もいる。東京都内の一戸建てで1人暮らしの清水政文(96)=仮名=の元には週3回、夕食時に2時間、家事代行大手ダスキンのケアスタッフが訪れる。

 清水は介護保険の生活援助も1日2回受けているが、認知症のため1人で外出してしまうことがあり、見守りが必要。近くに住む娘の藤田知代(63)=仮名=が頻繁に足を運ぶものの、どうしても空白の時間が生じる。

 2時間で約7600円(首都圏の標準料金)と安くないが、「これがないと生活が成り立たない」と藤田。「保険のヘルパーは制度上、父と一緒に食事できないけど、自費ならできる」と自由度の高さも利点だ。

 政府は給付抑制の一方で、「自助」として保険外サービスの活用を呼びかける。だが、藤田はこうもつぶやいた。「うちは父に蓄えがあったからよかったけど、経済的に余裕がない人はどうするのかしら」
 
(敬称略、年齢・肩書は取材当時)
   ×   ×   × 
 介護人材の不足、膨らむ費用、急速な高齢化を迎える首都圏…。団塊の世代が75歳以上になる2025年を前に、介護保険はどこに向かおうとしているのか。現場や自治体、国の動きを追った。
 
 
介護保険の総費用は既に10兆円を超えた
介護保険の総費用は既に10兆円を超えた

 介護保険の現状 制度が始まった2000年度の年間総費用は約3兆6千億円だったが、15年度には10兆円を突破。団塊の世代が全員75歳以上になる25年度には20兆円に近づく見通しだ。利用者負担を除く財源は、税金と40歳以上が支払う保険料で半分ずつ賄う。サービス利用に必要な要介護認定を受けた高齢者は17年12月現在、約629万人。膨張する費用を抑えようと、政府は15~17年度に軽度の要支援1、2向けの訪問・通所介護を市区町村の事業に移した。18年4月には介護サービス事業所や自治体に高齢者の自立支援を促す仕組みも導入。利用者負担は一律1割だったが、一定の所得がある人は15年から2割に、高所得者はさらに18年8月から3割に引き上げられた。現場では人手不足が慢性化しており、政府は外国人材の受け入れを拡大する方針だ。

 

 

最新記事

関連記事 一覧へ