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(28) 「胸」 死者の胸に×の形をかく

2008.10.4 12:47

 神社などのおみくじで「凶(きょう)」や「大凶」を引いたことがありませんか。縁起(えんぎ)が悪い運勢のことですから、もちろんいやなものですよね。でも「凶」の字形を見ただけで、なんか悪いことに関係しているような気持ちがしてきませんか。

 実はこの「凶」という字は死と文身(ぶんしん)(入れ墨(ずみ)のこと)に関係した文字なのです。「凶」は「凵」と「×」を合わせた字形。「凵」は胸の形です。死者の胸に朱(しゅ)色などで×形の文様をかき、死体に悪い霊(れい)が入り込(こ)まないようにまじないをすることを「凶」というのです。

漢字物語「胸」

 これは人が死んだ時に行う事でしたから、凶事(縁起が悪い事)とされました。そこから「わるい・まがごと」の意味となっていったのです。

 この「凶」に人の下半身の形である「儿」を加えた文字が「兇(きょう)」です。行き倒(だお)れなどで亡くなった人の胸に×を加えて、その邪霊(じゃれい)を封(ふう)じました。

 「兄」「光」「見」などの紹介でも述べましたが、「儿」はその上の字形を強調する形です。「兇」は怖い霊を持つ者のことです。のちにすべての兇暴、兇悪な人をさすようになりました。

 「胸」は「凶」と「勹」と「月」とを合わせた字形です。死者の胸(「凵」)に朱色などで×形の文様をかき、死体に悪い霊が入らないようにしたのが「凶」。「勹」は人の全身を横から見た形です。それを合わせた「匈(きょう)」に身体の一部であるという意味の「月」(肉づき)を加えて「むね」の意味となりました。

 もとは「匈」だけで「胸」の意味の文字でした。さらに言えば「凵」が胸の形ですよね。

 この胸の元の字形である「匈」に「リッシンベン(リッシンベン)」を加えたのが「恟(きょう)」という字で、びくびくと「おそれる」という意味です。

 不安でおそれ、びくびくする時には胸がどきどきするものです。この「恟」にも胸と凶事の強い関係が示されているのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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